artek

アルテックとスツール60

Art(芸術)と Technology(技術)の融合を意味する言葉、アルテック〈artek〉
1935年にアルヴァ・アアルトが妻アイノ・アアルトらと共に設立した家具ブランド・アルテック〈artek〉には、フィンランドの森の白樺をつかって長く愛されるものをつくる使命がありました。
誰もが一度は見たことあるアアルトのスツール60〈stool No.60〉
人の人生は一度きりだけど、誰かが愛した思い出の家具は、何度でも蘇って「セカンドサイクル」をおくることができます。
アアルトのスツールがつなぐ、もうひとつの物語を見つけにゆきませんか?

2013 Photo & Text_Scandinavian fika.

artek

アルテック

エスプラナーディ〈Esplanadi〉目抜き通りのアカデミア書店〈Akateeminen Kirjakauppa〉の隣ある北欧を代表する家具ブランド アルテック〈artek〉。 店内にはアアルトがデザインしたスツールやテーブル、テキスタイル・シエナ〈SIENA〉のトートバッグやキッチンミトンなどのアイテムが並びます。
「art〈芸術〉」と「technology〈技術〉」の融合を意味するアルテックは、1935年にアルヴァ・アアルトと妻アイノ・アアルト〈Aino Aalto〉が、マイレ・グリクセン、ニルス・グスタフ・ハールらと共に創設しました。

フィンランドは森の国。国土の70%が松、もみ、白樺の三種類の森林で覆われているこの国では、新たな木材の用途を見つけ、量産し、輸出する必要に迫られていました。そして、フィンランドの産業復興のため、この難題に挑んだのがアアルトだったのです。
アアルトはなにより、フィンランドの木のぬくもりを愛していたといいます。スチール製の家具のように丈夫で、大量生産ができ、木材のもつぬくもりを保つことができる技術の開発。これこそが、アートとテクノロジーの融合を目指すアルテックの使命だったのです。

artek|stool 60

スツール60とアアルトレッグ

「ONE CHAIR IS ENOUGH」と大きく書かれたパッケージ。この中には、丸い座面とL字型の脚が3本入っています。ドライバー1本で組立てられる、とてもとてもシンプルな椅子。誰もが一度は見たことある愛らしいあのカタチ。
1933年に発表されたアルヴァ・アアルトの代表作品 スツール60〈stool No.60〉。フィンランドの白樺を活かした温かくやわらかな3本脚のフォルムは、まさに究極のスツール。
もともとアアルト設計のヴィープリ図書館のために作られたスツール60は、発売以来、世界中で不朽のロングセラーに!

白樺(バーチ)の無垢材を曲げて作るL字型の脚は、アアルトレッグと呼ばれ、世界で唯一の製法で作られたもの。木の脚に櫛のようなスリットを入れ、薄い木片ラメラを挟み込み、接着し、曲げ加工を行って乾燥させた後、やすりで表面をなめらかに仕上げる「L – レッグ」。その技術を開発したアアルトとアルテックは、フィンランド家具の礎を築いたのです。
シンプルで美しく、丈夫で、どんな場所でも使えるもの。
親から子へ。子から孫へ。何世代にも渡って受け継いでゆくもの。
時代を超え、変わることのない、ひとつのカタチ。
「ONE CHAIR IS ENOUGH」

セカンドサイクル

アルテックは2007年からセカンドサイクル〈2nd Cycle〉というプロジェクトをスタートさせます。これは、学校や福祉施設、個人の自宅などで長年愛用されてきたスツール60を回収して、新品と交換するというもの。面白いのは、回収されたスツール60に、その家具がどこでどのように使われてきたかの歴史を記録し、「セカンドサイクル」としてもう一度販売するということ。なんと、座面の裏側には椅子の歴史をつづったICチップが組み込まれているのだとか。そして、新しいオーナーのもとへと旅立っていったスツール60は、そこから新しい物語をつむいでゆきます。(※その後の物語は、ウェブサイトで見ることができるしくみ) 
この取り組みは Sustainability(サステナビリティ)という言葉で語られることもありますが、「長く愛されるものの価値」をアルテックは伝えようとしています。
セカンドサイクルストアはアルテックから南に10 分ほど歩いたデザインミュージアムの近くにあります。レアアイテムがいっぱい並んでいるので、アルテックファンは必見です!

Pieces of Aalto -A Visual Round Trip-

ああるとのカケラ

2019年、フィンランドと日本外交樹立100周年を記念してつくられた〈artek〉の 〈FIN / JPN フレンドシップ コレクション〉。
スツール60 ウスタヴァ〈Stool60 Ystävä〉は、フィンランド語で「友達・友人」を意味する言葉。フィンランドと日本との深い友情から生まれたウスタヴァ〈Ystävä〉は、白樺のバーチ材の自然のままの節や黒筋、濃い木目のある脚が特徴。座面裏には、アイノ・アアルトの桜の花〈Kirsikankukka / キルシカンクッカ〉のシンボルマークが刻印されています。
〈FIN / JPN フレンドシップ コレクション〉に参加した ミナ ペルホネン〈minä perhonen〉の皆川明さんは、〈artek〉の 「L – レッグ」のドローイングをミナ ペルホネンの生地〈dop〉に刺繍で表現し、ウスタヴァ〈Stool60 Ystävä〉に張り込んだ特別なスツール60「ああるとのカケラ」を発表しました。
皆川 明さんのもう一つのコレクション、フィンランドブルーのハードカバーの書籍「Pieces of Aalto -A Visual Round Trip- ああるとのカケラ」は、アルヴァ・アアルトやアイノ・アアルトが生み出したプロダクトデザインのカケラたちが、新しい生きものや風景のように物語をつむぎ、ドローイングや詩や言葉で描かれています。

アルテックの家具はほんとうに好き。いつも 「L – レッグ」のスツール60やテーブルを使っているし、白樺のなめらかな手ざわりと美しい木目、ウスタヴァの自然のままの節も、日を重ねるごとに愛おしくなる。
100脚限定でつくられた ミナ ペルホネンのウスタヴァ「ああるとのカケラ」が わが家にやってきた時は飛び跳ねて喜びました! オリーブ グリーンのモールスキンのファブリックに「L – レッグ」の刺繍が浮かび上がって素敵。
ずっと仲良く、大切につかって、いつかわたしとの人生が終わっても、つぎの誰かの「セカンドサイクル」になればいいな。
何度も生まれ変わるように、新しい物語がつづいてゆけばいい。

minä perhonen  x  artek|Stool 60 Ystävä

Alvar Aalto

1898-1976|Finland
©︎ Alvar Aalto Museum

アルテック

アクセス
エスプラナーディ通り〈Esplanadi〉の
アカデミア書店〈Akateeminen Kirjakauppa〉のとなり。

artek
www.artek.fi

 

Akateeminen Kirjakauppa

アカデミア書店と
カフェ・アアルト

アアルト設計の
フィンランド最大の書店


NEXT STORY

RELATED STORIES