ARABIA

アラビアとパラティッシ

アラビアとイッタラの旅 - 前編 -

スオミ〈Suomi〉に愛される、ふたつの器。それは100年以上にも渡り、「美しい暮らし」の答えを私たちにしめしてくれたもの。
陶磁器ブランドとして誕生したアラビア〈ARABIA〉と、小さな村のガラス工場からはじまったイッタラ〈iittala〉

ビルガー・カイピアイネン〈Birger Kaipiainen〉のパラティッシ〈Paratiisi〉と、アラビア工場の旅。

2013 Photo & Text_Scandinavian fika.

ARABIA

アラビア ファクトリー

140年の歴史を持つフィンランドを代表する陶磁器ブランド、アラビア〈ARABIA〉。1873年にヘルシンキ郊外の別荘地に建てられた工場の周辺には、通りごとに世界の都市の名前がつけられていて、アラビア通りに工場があったことから「アラビア」が誕生しました。はじめはスウェーデンのロールストランド〈Rörstrand〉の子会社として創業したアラビアでしたが、1900年のパリ万博出品作で金賞を受賞し、30年代にはヨーロッパ最大の工場へと成長を遂げます。そして1953年、カイ・フランク〈Kaj Franck〉が発表したキルタ〈kilta〉シリーズが、テーブルウェア界に革命を起こすのです。
アラビアミュージアム〈Arabian museo〉とARABIA・iittala ファクトリーショップがあるアラビア工場へは、ヘルシンキ中央駅から6番トラムに乗って約30分。終点の1つ前「Arabiankatu」で降りると、お馴染みのあのエントツの工場が見えてきます。ARABIAの器の底に刻印されている王冠のようなロゴマーク。実はあれは王冠ではなく、工場のエントツをあらわしているのだそうです。

【追記】アラビア工場、閉鎖

とても悲しいことに、2016年にアラビア工場〈Arabia Factory/アラビアファクトリー〉は閉鎖されました。陶器の製造を海外に移転。これから「mede in FINLAND」のアラビア食器はなくなるそうです。
2020年現在もエントツのアラビア工場の建物とアラビアファクトリーショップは残っていますが、工場見学やアウトレット品の販売はなくなってしまいました。
2016年秋からアラビアミュージアムはイッタラとアラビアの歴史を伝えるための施設、イッタラ&アラビアデザインセンター〈ITTALA & ARABIA DESIGN CENTRE〉がオープン。デザインの魅力いっぱいの施設なので、つぎはぜひ行ってみたい!

Birger Kaipiainen|Paratiisi 

「楽園」パラティッシ

アラビアの器の中でも世界中の人びとを魅了し、製造中止になる度に何度もよみがえってきたビルガー・カイピアイネン〈Birger Kaipiainen〉のパラティッシ〈Paratiisi〉。フィンランドを代表するセラミックアーティスト、カイピアイネンが1969年にデザインした「楽園」という名のパラティッシには、リンゴ、プラム、ブドウ、パンジー、クロスグリ〈カシス〉などの果物や植物がアーティスティックに描かれています。どこか神秘的で叙情的な装飾は、中世ルネッサンスにインスピレーションを受けているといわれています。
アラビアやロールストランドで活躍したカイピアイネンは、1960年にビーズで作った鳥のオブジェ bead-bird でミラノトリエンナーリ・グランプリを受賞。その時から「フィンランド陶芸界のプリンス」と称されるようになりました。食器のデザインよりも、オブジェやセラミックのアートピースを多く残しています。
同じアラビアの器でも、カイ・フランクのキルタのようにシンプルで機能的なデザインとは正反対。カイピアイネンのデザインは、色彩豊かでファンタスティックでゴージャス。そして、ベルギーの王女がパラティッシを見るなり欲しがったというように、女性をとりこにする魅惑の美しさがあります。

2013年のアラビア工場見学では、パラティッシの絵付けやティーマをつくる作業過程を見ることができました。ものづくりの現場に触れることは、いつも刺激的で楽しいものです。大きな窯や機械に驚きながらも、やはり最後は、人の手と目でひとつひとつ作られているのだと実感します。

Ulla Procope|Valencia

ARABIA・iittala ファクトリーショップ

アラビア工場に入るとすぐ、ARABIA・iittala ファクトリーショップがあります。フィンランド最大の品揃えを誇るファクトリーショップでのショッピングがお目当ての旅行者も多いはず。おみやげには、歴代のアラビアのロゴがデザインされたアラビア工場限定マグが人気で、赤いタグがついたB級品は20〜30%オフで購入できます。割れものなので買い物は慎重に!と心に決めていたのですが、アアルト自邸に行った後だったので、たまらずアアルトベースを買っちゃいました。

【追記】
2016年にアラビア工場〈Arabia Factory/アラビアファクトリー〉が閉鎖されましたが、ARABIA・iittala ファクトリーショップは現在も残っています。ただ、アウトレット品の販売は2016年で終了してしまったそうです。


後編へつづく →

ARABIA

Helsinki|Finland

イッタラ&アラビアデザインセンター

アクセス
2016年にアラビア工場は閉鎖し、
現在はイッタラ&アラビアデザインセンターに。 
ヘルシンキ中央駅から
6番トラムに乗って約30分。
〈Arabiankatu〉駅で下車。

ARABIA
arabia.fi

ITTALA & ARABIA DESIGN CENTRE
www.designcentrehelsinki.com

iittala

イッタラとカイ・フランク
- 後編 -

スオミに愛される、ふたつの器
アラビアとイッタラ


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