Malmö

オーレスン海峡を渡って
マルメ へ

スコーネ・マルメの旅

デンマークのシェラン島とスカンジナビア半島のスウェーデン南部を結ぶオーレスン海峡〈Öresund / Øresund〉。はじめての南スウェーデン・スコーネ地方〈Skåne〉への旅は、コペンハーゲンからオーレスン鉄道で海を渡り、スウェーデン第三の都市マルメ〈Malmö〉へ向かいます。
パスポートケースにずっと旅のお守りのようにしまってあった 20スウェーデン・クローナ紙幣。そこには、白いガチョウにのって旅する小人の少年ニルスが描かれています。 子供の頃に夢中で読んだスウェーデン童話『ニルスのふしぎな旅』。
ニルスの旅のはじまりも、南スウェーデンのスコーネ地方でした。

2019 Photo & Text_Scandinavian fika.

Malmö

スコーネと「ニルスのふしぎな旅」

2019年6月。日本から飛び立ったフィンエアー〈FINNAIR〉は、フィンランドのヘルシンキ・ヴァンター空港を経由して、デンマークのコペンハーゲン・カストラップ国際空港〈Københavns Lufthavn, Kastrup〉に到着。入国ゲートを真っ直ぐ進んで、 〈Skånetrafiken〉(スコーネ トラフィーケン)の赤い券売機でスウェーデン「マルメ中央駅」〈Malmö central〉行きの電車のチケットを買います。
デンマーク・コペンハーゲンからスウェーデン・マルメまでは電車でわずか3駅(約25分)。オーレスン海峡にかかる大きな橋を渡って、国境を越えます。
初めて訪れる南スウェーデンのスコーネ地方〈Skåne〉。デンマークのシェラン島とスカンジナビア半島南部を結ぶ オーレスン鉄道〈Öresundståg / Øresundstog〉(オーレスントーグ)の車窓からオーレスン海峡の静かな海が見えます。

鉄道での国境越えは初めて。長時間のフライトの疲れで、頭の中はぼんやり。車内でパスポートチェックがあることを思い出して、慌ててパスポートケースを開いたら、20スウェーデン・クローナ紙幣を見つけました。
旅のお守りのようにしまってあったお札には、白いガチョウにのって旅する小人の少年ニルスが描かれています。
小学生の時に夢中で読んだスウェーデン童話『ニルスのふしぎな旅』〈Nils Holgerssons underbara resa genom Sverige〉。14歳の少年ニルスが妖精の魔法で親指ほどの小人にされ、ガチョウのモルテンやガンのアッカの群れといっしょにスウェーデン南部から北のラップランドを目指して旅する物語。ニルスの旅のはじまりは、そう、この南スウェーデンのスコーネ地方でした。
(20スウェーデン・クローナ紙幣の表には、『ニルスのふしぎな旅』の作者 セルマ・ラーゲルレーヴ〈Selma Lagerlöf〉が描かれています。 2015年にスウェーデン・クローナ紙幣のデザインが変更され、現在は『長くつ下のピッピ』の作者アストリッド・リンドグレーン〈Astrid Lindgren〉が描かれています)

北極圏のラップランドまでは行かないけれど、わたしもこれから、スウェーデン南部のスコーネ、首都ストックホルム、スウェーデン中部のダーラナ地方を旅して、ニルスのようにスカンジナビア半島を北上します。
この先、どんな冒険や出会いが待っているんだろう。自分を小人の少年ニルスに重ねて、旅の想像を膨らませていたら、電車はあっという間に「マルメ中央駅」に到着。
スウェーデン第三の都市 マルメ〈Malmö〉にやってきました。

Elite Hotel Savoy

スウェーデン第三の都市 マルメ

南スウェーデンのスコーネ地方(スコーネ県)の湾岸都市 マルメ〈Malmö〉
17世紀にスウェーデンの領土になるまで、デンマークの支配下にあったマルメ。その後、商工業都市として発展を続け、ストックホルム(人口96万人)、ヨーテボリ(人口57万人)に次ぐ、スウェーデン第三の都市に(人口33万人)。
15世紀に築かれた城塞や16世紀の歴史的建築物と、湾岸エリアの再開発によってつくられたモダン建築が混在し、新旧の街並みが融合するマルメ。マルメ大学〈Malmö högskola〉の学生を中心に、若者やアーティストにも人気の国際色豊かな街。
エコシティーを目指すマルメは近年、環境に配慮したサステナブル(持続可能)な都市としても注目を集めているそうです。

ガラス張りの吹き抜けが印象的なマルメ中央駅を出て、水堀の向かいに見えた エリートホテル サヴォイ〈Elite Hotel Savoy, Malmö〉に宿泊。
マルメに着いたのは夜7時ごろ。今夜はマルメで1泊して、明日の朝、マルメから南東のイースタ〈Ystad〉の町へ電車で移動します。
北欧の夏の白夜は、夜だということを忘れてしまいそう。
今夜はマルメ市庁舎にある人気のレストランでゆっくりディナーでも……と考えていましたが、夏の斜光に照らされたマルメの街並みが魅力的で、もう居ても立っても居られず、ホテルに荷物を置いてすぐ、カメラを持って街へくり出しました!
(今夜のディナーは、駅のキヨスクのヨーグルトと ガトー〈Gateau〉のシナモンロールに急遽変更!まあ、いつものことですが)

マルメ城と旧市街

1434年に築かれたスカンジナビア最古のルネッサンス様式のお城、 マルメ城〈Malmöhus〉。 赤レンガの要塞マルメ城は、スウェーデン・スコーネ地方がまだデンマーク領であった時代に建てられました。
お城の周りには自然歴史博物館、美術館、動物園、水族館などがあり、季節の美しい花が咲き誇る 王宮庭園〈Kungsparken〉も人気だとか。

マルメ城を囲って築かれた大きな水堀の中には、Gamla staden(ガムラ スタン)と呼ばれるマルメ旧市街があります。マルメ旧市街の中心には、石畳の大広場 ストールトリエット〈Stortorget〉が広がり、スウェーデンのマルメをデンマークから取り戻した国王、カール10世グスタフの銅像が建てられています。
マルメの歴史を感じながら、中世にタイムトリップしたいなら、旧市街とマルメ城を歩きましょう。中央駅から南へ5分歩けば、すぐ大広場へたどり着きます。マルメはとってもコンパクトな街。1日あれば十分楽しめます。
大広場の近くにはリラ・トリィ広場〈Lilla torget〉という小さな広場もあって、北欧料理をはじめ、アメリカンダイニングバーやアジア料理など様々なジャンルのレストランやカフェが建ち並び、夜は活気にあふれています。

マルメ市庁舎

ストールトリエット大広場の一角に建つ マルメ市庁舎〈Malmö Rådhus/ Malmo City Hall〉。
ルネッサンス様式にデンマークの建築様式を取り入れたレンガ造りの建築は、マルメがスカンジナビアで最大の都市のひとつだった1544年から1547年にかけて建てられたそう。
ファサードに施された彫刻のような細工が、陽の光に浮かび上がって美しい。
(※市庁舎内は観光客向けには公開されていません)

市庁舎には伝統的なスウェーデン料理を味わえる人気のレストラン Rådhuskällaren  があります。岩をくり抜いたような内装の雰囲気も素敵!(本当は今夜、ここで食事をするつもりだった!)

聖ペトロ教会

マルメ市庁舎の奥にそびえる赤レンガ造りの尖塔の時計塔。14世紀に建てられたマルメ最古の教会、聖ペトロ教会〈Sankt Petri kyrka〉
98メートルの尖塔を持つ聖ペトロ教会の内部は、白いアーチの美しい天井、金色の祭壇と祭壇画、パイプオルガン、壁画が描かれたチャペルなど、神聖な教会の細部を見ることができます。

ライオン薬局

大広場の前に勇しく建つ赤レンガ造りの建物は、19世紀末に建てられたネオ・ルネッサンス様式の建築。創業1571年のスウェーデン最古の薬局、ライオン薬局〈Apoteket Lejonet / アポテケット レイオネット〉。 かつてはヨーロッパ最大の薬局のひとつだったとか。
金のライオンが見守る重厚な木製扉を開くと、内装には華美な装飾が施され、これが薬局とは思えません!タイルのようなライオン模様のガラスの天井、美しい木工細工が入った薬棚、モザイクアートとライオンの小さな噴水など、ミュージアムのような楽しさがいっぱい!

セーデル・ガータン通り

ライオン薬局の前の通りには、音楽隊のパレードの像。なんだろう?と思っていたら、グリム童話の『ブレーメンの音楽隊』でした!
どうしてスウェーデン に『ブレーメンの音楽隊』?どうしてロバやイヌやネコやニワトリじゃないの? 謎は謎のままでしたが、音楽隊に混じって写真を撮れるフォトスポットみたい。
『ブレーメンの音楽隊』の像から南へのびる旧市街のメインストリートは、セーデルガータン通り〈Södergatan〉。歩行者天国のセーデルガータン通りは南の水堀近くのグスタフ・アドルフ広場〈Gstav Adolf Torg〉まで続いていて、カフェやレストラン、ショッピングモールやブティックが建ち並ぶ、マルメの人気のショッピングストリート。

近くのリラ・トリィ広場のそばには、ミュージアムショップのような フォルム デザインセンター〈Form Design Center〉もあります。展示作品を見たり、お土産を見つけたり、北欧デザインに触れることができます。

Malmö stadsbibliotek

マルメ市立図書館

夏の北欧はほとんど日が沈まない。
11時ごろ仄暗い夜が来て、ホテルに戻ってベッドで眠ったら、3時過ぎには空が明るくなって、夜が明けた。
マルメの滞在時間は短いけど、もったいないから朝の街を歩いてみることにした。
出発までの数時間、マルメ旧市街の水堀の外に行ってみた。

マルメ城の自然公園の南に見えた建築はマルメ市立図書館〈Malmö stadsbibliotek〉。図書館は赤レンガ造りの旧館とガラス張りのモダンな新館が、ブリッジのような円形の建物でつながっていた。
(図書館大好きなので中に入りたかったけど、早朝なので開いてなかった……)
外から眺めるだけだったけど、新館のガラス張りの吹き抜けフロアが素敵すぎる!あんな優雅な空間で本を読めたら、どんなに幸せだろう。
北欧の図書館はすごい。楽しさがあふれてくる。
日本にももっと、魅力的な図書館がたくさんできてほしいな。小さな町にも。
デザインと、リラックスと、イマジネーション。「学びことの喜び」を分かち合う図書館を。

Turning Torso

ターニング・トルソ

2005年に完成した高さ193mの北欧で最も高い建築、ターニング・トルソ〈Turning Torso〉。竜巻のうねりのような斬新なデザインの高層ビルは、スペイン出身の世界的な建築家サンティアゴ・カラトラヴァ〈Santiago Calatrava Valls〉が手がけたもの。
マルメのランドマーク、ターニング・トルソがそびえるのは湾岸エリアのヴェストラハムネン〈Västra Hamnen〉。 マルメ中央駅や旧市街の北にある振興リゾート開発地域。ヴェストラハムネンの湾岸エリアにはオフィスやレストランが集まり、高級住宅地や北欧モダン建築が建ち並ぶ、お洒落でホットなエリアです。

バルト海と北海を結ぶオーレスン海峡。ウォーターフロントに広がるのは人工のビーチ、リバースボルグ〈Ribersborg〉。海水浴でにぎわうビーチには、海に突き出たように桟橋がのびるサウナ、 リバースボルク野外浴場〈Ribersborgs Kallbadhus〉があります。マルメ市民の憩いの場で、サウナで温まったら、そのまま海にドボンッ! あー、次はぜったい行きたい!

Clarion Hotel Malmö Live

時間が足りなくて行けなかったけど、マルメ大学の近くの人気のマーケットホール  マルメ サルハール〈Malmö Saluhall〉や、クラリオンホテル マルメ ライブ〈Clarion Hotel Malmö Live〉ある最上階のスカイバーも魅力的(マルメが一望できる展望バーはランチもやっているそう)
マルメは小さな街だけど、本当におしゃれなスポットがたくさんある!

朝食をもりもり食べて、ホテルをチェックアウト。マルメ中央駅〈Malmö C〉からスコーネ鉄道の紫色の電車 ポーガトーグ〈Pgatågen〉に乗って約1時間。 次の町、イースタ〈Ystad〉へと出発しました。

車窓に流れる緑の平原。また、『ニルスのふしぎな旅』を思い出していました。
ニルスの家があるのは、スコーネ地方のマルメとイースタの間にある西ヴェンメンヘーイ〈Vastra Vemmenhog〉の町。
小人にされたニルスが、ガチョウのモルテンの首に飛びついて初めて空を飛んだとき、スコーネの畑や牧場が美しい市松模様に見えたそう。

きっとニルスは、あのあたりを飛んでいたんだろう。

Malmö

Skåne|Sweden

マルメ

アクセス
デンマーク・コペンハーゲンから
オーレスン海峡を渡って
電車で3駅、約25分。
マルメ〈Malmö C〉駅で下車。

malmo.se/malmotown

Lund

南スウェーデンの古都
ルンド

南スウェーデン・スコーネの旅


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