北欧フィーカ|フィンランド・ヘルシンキの旅|アカデミア書店とカフェ・アアルト。スツール60を見つけにアルテックへ。|Scandinavian fika.

デンマーク・スウェーデン・フィンランド、北欧デザインの旅。

アカデミア書店とカフェ・アアルト。スツール60を見つけにアルテックへ。

ポホヨイ・エスプラナーディ通りのストックマン・デパートの向かいにあるフィンランド最大の本屋さん、アカデミア書店(Akateeminen Kirjakauppa)。2階の一角には、この書店を設計したフィンランドの巨匠アルヴァ・アアルト(Alvar Aalto)の名前のついたカフェがあります。
公園を抜けて、南のエテラ・エスプラナーディ通りには、アルヴァ・アアルトが妻アイノ・アアルトらとともに設立した北欧を代表する家具ブランド、アルテック(artek)があります。

誰もが一度は見たことあるアアルトの「スツール60」。 人の人生は一度きりだけど、誰かが愛した思い出の家具には、何度でも蘇って「セカンドサイクル」を送ることがゆるされています。
アアルトの家具をめぐる、もうひとつの物語を見つけにゆきませんか?

□写真左/ カフェ・アアルトのペンダントランプ、ゴールデン・ベル(Golden Bell)

Akateeminen

アカデミア書店

20世紀を代表するモダニズム建築家アルヴァ・アアルト(Alvar Aalto)が、1969年に設計したアカデミア書店(Akateeminen Kirjakauppa)。この国内最大の書店は、エスプラナーディ通りの老舗デパート ストックマン(Stockmann)のとなりにあり、アアルトの建築めぐりのスタートとして最適な場所。
店内は白い大理石の壁で覆われ、回廊式になっていて三層吹き抜けの開放的な空間。天井には、彫刻のようなクリスタル・スカイライトが並んでいます。本をひらいたようなユニークな形をした天窓。そこから降り注ぐ、柔らかな自然の光。冬の日照時間が短いフィンランドで、暮らしに少しでもあかりをとり入れるために、アアルトは光そのものをデザインしているのです。
各フロアのコーナーを見ると、天井は波のようにゆるやかなカーブを描き、正面入口のドアには波が重なり合ったようなハンドルがついています。
ヘルシンキの中でもアカデミア書店が特別なのは、本と人とを結ぶ空間を、アアルトの光と波があたたかく包んでいるから。

2013. update.

Cafe Aalto

カフェ・アアルト

本が大好きな人なら、きっと北欧の洋書に魅かれることでしょう。特にインテリアやデザインの本は装丁もおしゃれだし、内容はわからなくても写真集のようにペラペラめくって、部屋の本棚に飾っておくだけでも絵になります。でも本って重たいし、結構高いし……悩みますねえ。ちなみに自分は「アアルトの本をどうして買わなかったんだろう」と後悔しまくりです。
アカデミア書店の2階には、アアルトの名前がついた世界でひとつだけのカフェ、カフェ・アアルト(Cafe Aalto)があります。小さいお店ですが、大理石のテーブルやブラックのレザーチェア、ゴールドのペンダントライトもすべてアアルトがデザインしたもの。映画『かもめ食堂』で、サチエ(小林聡美)さんがミドリ(片桐はいり)さんと出会って、「ガッチャマンの歌」を歌ったカフェとして有名です。カフェ・アアルトではコーヒーといっしょに、季節のタルトやシナモンロールがおすすめ!
地下1階はステーショナリーコーナーになっているので、文房具好きなら要チェックです!

2013. update.

The Ant

ヤコブセンのアリンコチェア

ラウタタロ(Rautatalo)というアアルト設計のオフィスビルが建てられたのは1950年代のこと。その中にヘルシンキの人びとから愛される小さなカフェがありました。ところがその後、ラウタタロが経営難が陥り、倒産したことで、カフェも惜しまれつつ閉店。残ったアアルトデザインのインテリアはすべて競売にかけられました。それを買い取ったのがストックマン・デパートです。
そして1986年、アカデミア書店に新しいカフェがオープン。みんながずっと待ち望んでいた「カフェ・アアルト」の誕生です。ゴールデンベルをはじめとするアアルトのインテリアは、ストックマンからアアルト財団に寄付され、もう一度、アアルトのカフェに帰ってきました。
興味深いのは、カフェ・アアルトにアルネ・ヤコブセンのアントチェアが使われているところ。なぜアントなのか?理由を聞いても今はもうわからないのだとか。このデンマークとフィンランドの巨匠のコラボレーションがたまらなくて、自分もアントチェアとスツール60を部屋に並べて使っています。
「とにかく、アリンコの背中が人懐っこくて、かわいかったから」 愛される理由とは、案外、そんな単純なものかもしれません。

2013. update.

artek

アルテック

アカデミア書店から、エスプラナーディ公園を挟んで、南の目抜き通りにある北欧を代表する家具ブランド アルテック(artek)
店内にはアアルトがデザインしたスツールやテーブル、テキスタイルSIENAのトートバッグやキッチンミトンなどのアイテムが並びます。
「art(芸術)」と「technology(技術)」の融合を意味するアルテックは、1935年にアルヴァ・アアルトと妻アイノ・アアルトが、マイレ・グリクセン、ニルス・グスタフ・ハールらと共に創設しました。
フィンランドは森の国。国土の70%が松、もみ、白樺の三種類の森林で覆われているこの国では、新たな木材の用途を見つけ、量産し、輸出する必要に迫られていました。そして、フィンランドの産業復興のため、この難題に挑んだのがアアルトだったのです。
アアルトはなにより、フィンランドの木のぬくもりを愛していたといいます。スチール製の家具のように丈夫で、大量生産ができ、木材のもつぬくもりを保つことができる技術の開発。これこそが、アートとテクノロジーの融合を目指すアルテックの使命だったのです。

2013. update.

ONE CHAIR IS ENOUGH

スツール60とアアルトレッグ

「ONE CHAIR IS ENOUGH」と大きく書かれたパッケージ。この中には、丸い座面とL字型の脚が3本入っています。ドライバー1本で組立てられる、とてもとてもシンプルな椅子。誰もが一度は見たことある愛らしいあのカタチ。
1933年に発表されたアルヴァ・アアルトの代表作品 スツール60(stool No.60)。フィンランドの白樺を活かした温かくやわらかな3本脚のフォルムは、まさに究極のスツール。
もともとアアルト設計のヴィープリ図書館のために作られたスツール60は、発売以来、世界中で不朽のロングセラーに! アップルストアでもアアルトのハイチェアが使われています。
白樺(バーチ)の無垢材を曲げて作るL字型の脚は、アアルトレッグと呼ばれ、世界で唯一の製法で作られたもの。木の脚に櫛のようなスリットを入れ、薄い木片ラメラを挟み込み、接着し、曲げ加工を行って乾燥させた後、やすりで表面をなめらかに仕上げる「Lレッグ」。その技術を開発したアアルトとアルテックは、フィンランド家具の礎を築いたのです。
シンプルで美しく、丈夫で、どんな場所でも使えるもの。親から子へ。子から孫へ。何世代にも渡って受け継いでゆくもの。時代を超え、変わることのない、ひとつのカタチ。
「ONE CHAIR IS ENOUGH」

2013. update.

artek 2nd Cycle

セカンドサイクル

アルテックは2007年から、2nd Cycle(セカンドサイクル)というプロジェクトをスタートさせます。これは、学校や福祉施設、個人の自宅などで長年愛用されてきたスツール60を回収して、新品と交換するというもの。面白いのは、回収されたスツール60に、その家具がどこでどのように使われてきたかの歴史を記録し、「セカンドサイクル」としてもう一度販売するということ。なんと、座面の裏側には椅子の歴史をつづったICチップが組み込まれているのだとか。そして、新しいオーナーのもとへと旅立っていったスツール60は、そこから新しい物語をつむいでゆきます。(※その後の物語は、ウェブサイトで見ることができるしくみ)
この取り組みは、「サステナビリティ」という難しい言葉で語られることもありますが、「長く愛されるものの価値」を、アルテックは伝えようとしています。
セカンドサイクルストアはアルテックから南に10 分ほど歩いたデザインミュージアムの近くにあります。レアアイテムがいっぱい並んでいるので、アルテックファンは必見です!
それからアルテックのショップには、デンマークのカイ・ボイスン(Kay Bojesen)のモンキーや、フレンステッド社のモビール(Flensted Mobiles)など北欧セレクトアイテムもいろいろ。大好きなフィンランドのイルマリ・タピオヴァーラ(Ilmari Tapiovaara)の家具も置いてありました!初めて見るマドモアゼルチェアやピルッカに感激!フォルムが美しすぎる。

2013. update.

アルテック

artek

アルヴァ・アアルトが妻アイノらと共に創業した北欧を代表する家具ブランド、アルテック。
http://www.artek.fi

アルテック セカンドサイクル

artek 2nd Cycle

長年愛用されてきたアルテックの家具を回収し、本当のタイムレスなデザインを考えるプロジェクト。
http://2ndcycle.artek.fi

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