ウェグナーの椅子はさりげなく、かっこいい。ヤコブセンのエッグチェアのような華やかな主役ではく、まわりを引き立てる名脇役。
1960年のアメリカ大統領選で、J・F・ケネディとニクソンがテレビの討論会で座っていたラウンドチェアは、一夜にして有名に。その後、スミソニアン博物館に展示されることになると、「椅子の中の椅子」 ザ・チェアと呼ばれるようになりました。
工芸博物館のカフェのためにつくられたアームチェア(PP-701)は、ウェグナー夫人が最もお気に入りの椅子で、自宅のダイニングでも愛用しているとか。ホーン(角)のような笠木は4つのメープルの木片でつくられていて、削り出しに使われた残り木を利用してるそうです。「木を知り、木を愛する」ウェグナーの椅子は、ただ、そこにあるだけで、生命の息吹のような、気品を感じます。うっとりするほどの美しさ。そして、ゆったりした時間と、落ち着きをもたらしてくれるもの。 PP-701に座って、コーヒーを飲みながら工芸博物館の中庭を見ているだけで、時間が自分の体の中を流れてゆくような、不思議な気分になりました。木に癒されるように、ウェグナーの椅子は、座るものに力を与えてくれます。