Denmark Trip 12 1/7  はじめに

ハンス・J・ウェグナーのザ・チェア。

遠い北欧のデンマークから、日本の工芸品に、いつも血のつながりのような親近感を抱いていたというハンス・J・ウェグナー(Hans Jørgensen Wegner)。Yチェアをはじめとする彼の「木」の名作は、東洋の小さな島国の「和」の中にも自然に解け込みます。ウェグナーの椅子を、ウェグナーのことを、もっとよく知りたい。そして、日本と北欧をつなぐ一本の糸のような「何か」を見つけにゆきたい。「北欧デザインの旅」へと心を動かしたのは、1998年の国際デザイン・アウォードで日本人へ送った、彼のあの言葉でした。
「私の作品は、芸術品ではありません。日用工芸品なのです。ですから、手でさわってください。座ってみてください。そしてよく見てください。曲線を手で追って、つなぎ目を見て、心の流れを感じとってください。みなさんに、私の心、私の伝えたかったことを、ご自分の体を通して少しづつでも感じとっていただきたいのです。私は最もシンプルに、明確に、それが伝わるようにデザインしました」
美しい椅子を通して、「良いデザイン」とはカタチや華やかさを差すのではなく、人生を育むものだと教えてくれたウェグナー。92年間の、彼の生涯をたどります。(写真中央/ザ・チェア The Chair)