Tallinn 2

タリンのアーモンド菓子と
ガトーショコラ

エストニア・タリンの旅 - 後編 -

フィンランド・ヘルシンキ〈Finland / Helsinki〉からバルト海を渡って、バルト三国のひとつ、エストニア〈Estonia〉へ。
「おとぎの国」とうたわれる、世界遺産タリン〈Tallinn〉の旧市街。
時を超えて中世の石畳の小径に迷い込めば、まだ知らなかった北欧の美しさが見えてくる。
甘い香りに誘われて、おとぎの国 タリンの夢はつづきます。

2015 Photo & Text_Scandinavian fika.


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Tallinn 2

世界遺産 タリンのカモメ

北ヨーロッパ、バルト海の北東に位置するバルト三国のひとつ、エストニア〈Estonia/Eesti〉。1度でも世界遺産タリン〈Tallinn〉の旧市街を訪れれば、800年の歴史の中で大切に守られてきた中世のままの美しい街並みに心を奪われることでしょう。とんがり屋根やパステル色の建物に魅せられて、夢見心地な旅は続きます。
エストニア共和国の首都タリンは、ロシアや旧ソ連時代の面影が感じられる建物が多く残されています。でも、フィンランド湾に面したこの都は、13世紀にデンマーク人によって作られました。「タリン」はエストニア語で 「デンマーク人の城」という意味なのだそうです。
約2kmの城壁に囲まれたタリン旧市街は、商人や職人たちが築いた下町(アルーリン)と、貴族たちが暮らした山の手(トームペア)に分かれていて、2つのエリアは「長い足」という意味のピック・ヤルク〈Pikk Jalg〉と、「短い足」リュヒケ・ヤルク〈Luhike Jalg〉の2本の道で結ばれています。山の手のトーンペア地区を目指して、急な坂と階段アリの近道「短い足」をすすみます。

トーンペア城〈Toompea loss〉を通って、やってきたのはトームペアの丘にある見晴らしの展望台。タリンの主のような、白いカモメがお出迎え。
「やあ、よく来たね。この景色を見たら、きっとタリンのとりこになるよ」

トームペアの丘

トームペアの丘には世界遺産タリンの旧市街を一望できる絶景の展望台、パットクリ展望台〈Patkuli Vaateplats〉とコフトウッツァ展望台〈Kohtuotsa Vaateplats〉があります。
フェリーでタリン港に着いたころは小雨が降っていて、今日は良い写真が撮れないかもと凹みぎみでしたが、「短い足」リュヒケ・ヤルクの急な階段を1段づつ上るたび雨雲が流れてゆき、パットクリ展望台に立つと、嘘のように空から光がさしてきました。
まるでおとぎの国のような、中世のタリンの美しい街並み。とんがり屋根の塔と、ひときわ高くそびえる聖オレフ教会〈Oleviste Kogudus〉。800年という時が流れようとも、タリンは色褪せることなく輝き、淡いピンクのようなオレンジのような、やわらかな色につつまれています。感動的で、うっとりと恋に落ちる街。また会いたくなる、タリン。雪化粧の冬は、どれほど美しいことでしょう。

高さ123メートルの聖オレフ教会の塔の上からの景色は絶景です!冬季以外は上ることができるので、ぜひ!とおすすめしたいところですが、塔を上るのはとてもハード。かなりきついです。荷物はできるだけ軽く、歩きやすいスニーカーで挑みましょう。でも、てっぺんのあの景色を見たら、疲れなんてどこへやら。

マクス・マンテルの香り

おとぎの国のあちこちから、ふんわり流れてくる甘くて香ばしい香り。鼻をくすぐるような、ちょっぴりスパイシーな香りも混じっています。その香りをたどってゆくと、車輪のついた小さな屋台で、中世の衣装に身をつつんだかわいい女の子が魅惑のアーモンド菓子を売っていました。
中世から変わらないレシピで伝わるエストニアのお菓子、マクス・マンテル〈Magus Mandel〉。アーモンドに砂糖と16種類の秘伝のスパイスをコーティングした甘くて香ばしいマクス・マンテルは、タリンのいちばんの名物になっています。クレープのような紙の包みに入ったアーモンド菓子を片手に、中世の街を歩きながらポリポリ。シナモンのような香りがクセになり、おいしくて止まりません。

ピック・ヤルク通り

山の手のトームペア城と下町を結ぶ「長い足」ピック・ヤルク通りを通って、旧市庁舎前のラエコヤ広場〈Raekoja plats〉へ向かいます。高い城壁と分厚い扉のあるピック・ヤルクは緩やかな坂道になっていて、むかしお城の貴族が馬車を使っていた通り(下町の商人たちは勾配のきつい「短い足」を歩いて上っていたそう)。
ピック・ヤルク通りで見つけたカフェの雨どいも、「長い足」をあらわすな長〜いブーツ型になっていて楽しい。街には愉快な看板もたくさん。甘くてかわいいだけじゃないタリンの、スパイスのきいたユーモアも魅力。

Vegan Restoran V

ヴィーガン レストラン V

ランチはタリンで一番人気のレストラン、Rataskaevu 16〈ラタスカエヴ 16〉へ!ラタスカエヴ通りの名前がそのままついた古井戸の前のレストランに入ると、なんと本日予約で満席!あえなく撃沈です……(要予約!) 
めげずに次のお店へ向かいます。ラタスカエヴ通りを北へ少し進むと、サーモンピンクの壁にハートの「V」の字の可愛らしいお店が見えてきます。フライパンに目玉焼きの看板が目印のヴィーガン料理のお店、Vegan Restoran V〈ヴィーガン レストラン V〉。 自分はヴィーガンでもベジタリアンでもないけれど、野菜大好きで、フレッシュな野菜が恋しくなってきたころ。こちらも人気店ですが、運良く席が1つ空いていて入れました!
お店の雰囲気も最高で、店員さんもやさしくて可愛い。肉や魚はもちろん、乳製品や卵も使わない初めてのヴィーガン料理。お店のイチオシのベジバーガーをオーダー。野菜バーガーだからサンドウィッチみたいな軽いものをイメージしてたけど、とんでもない!ボリューミーなベジバーガーを見てびっくり!その驚いた顔を見て、店員さんもニコニコ笑っています。一口食べて衝撃………めちゃくちゃ美味しい!!これ、本当に野菜だけ?と感激してしまう味。フレッシュな冷製ベジスープ、野菜ケーキもぜひ!(ヴィーガンでなくても)野菜を愛する人に、ぜったいおすすめ!

Pierre Chocolaterie

マイスター・ホーブと ガトーショコラ

タリンを訪れたら、ぜったいに見つけてほしい隠れ家のような場所があります。ラエコヤ広場からレストランが並ぶヴェネ〈Vene〉通りを少し歩き、見落としてしまいそうな小さな入口のトンネルを抜けると、その奥に映画の舞台のような美しい中庭、マイスター・ホーブ〈職人たちの中庭/Meistrite Hoov〉が広がっています。13世紀から残る建物を活かした「職人たちの中庭」には、ガラスや木工細工、陶器やテキスタイル、ジュエリーなど、タリンのアーティストたちのスタジオ兼ショップが軒を連ねています。中世の面影を残す聖カタリーナの小径〈St. Catherine's passage〉のカタリーナ・ギルド〈Katarina Gild〉と合わせて、ぜひ見てほしい場所。
そして「職人たちの中庭」でもう1つ、忘れてはならないのは、1937年創業の老舗チョコレートカフェ、ピエール・ショコラティエ〈Pierre Chocolaterie〉。タリンの人々に長年愛され続けてきた濃厚ガトーショコラは絶品!オレンジピューレのマーマレードと合わせてもおいしい。冬なら名物のホットチョコレートもぜひ!口の中にとろける甘さと、あの隠れ家のような中庭にずっとひたっていたい。

ヴィル門とセーターの壁

毎年11月〜1月に、タリンのラエコヤ広場ではクリスマスマーケットが開かれます。旧市庁舎前にはタリンが発祥の地ともいわれる大きなクリスマスツリーが飾られ、イルミネーションやリース・オーナメントの屋台が並び、街はきらきらと光り輝きます。もしクリスマスシーズンにタリンを訪れるなら、旧市街の東のヴィル門〈Viru värav〉からタリン旧市街へ入ることをおすすめします。クリスマスシーズンのヴィル門はまさに、おとぎの国の入口。まっすぐラエコヤ広場へ向かえば、クリスマスマーケットでにぎわう幻想的なタリンを楽しめます。
ヴィル門の城壁をくぐって、ミューリヴァヘ通り〈Müürivahe〉を右に曲がると、「セーターの壁」と呼ばれる編み物の屋台がたくさん並ぶ通りが伸びています。エストニア伝統のミトンやマフラー、ニット帽やセーターなどが売られていて、おみやげにいっぱいほしくなります。 編み物や縞模様の織物が印象的なエストニア。この国に光をともしているのは、伝統的な手仕事。ふわふわのウールのミトンの編みの目にふれるだけで、ほっこりあたたかな気持ちになります。

Viru värav

帰りのヘルシンキ行きのフェリーの時間が近づいてきました。後ろ髪を引かれる思いでヴィル門を抜け、世界遺産の街を後にします。旧市街を1歩外に出れば、モダンな街でもあるタリン。
赤いトラムに乗って、もっといろいろまわりたかったな。エストニア野外博物館〈Eesti Vabaõhumuuseum〉でフォークダンスも見たかったな。いつか、赤いスカートの島、キヒヌ島にも行ってみたい。

ありがとう、タリン。ありがとう、エストニア。
Aitäh! Eesti!(アイタッ!エスティ!)

Tallinn

Estonia

タリン

アクセス
ヘルシンキ中央駅から
6番・7番トラムで約20分の
ヘルシンキ・西ターミナル〈Länsiterminaali〉へ。
西ターミナルからタリン港まで
タリンク・スター〈Tallink Star〉に乗って約2時間のクルーズ。
高速船リンダライン〈Linda Line〉なら約1時間半。

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