Dala-Floda 2

ダーラフローダの
ウールの刺繍

ダーラフローダの旅2 - 中編 -

スウェーデン人の"心のふるさと"、ダーラナ〈Dalarna〉。ダーラナの小さな村、ダーラフローダ〈Dala-Floda〉を訪ねて、ストックホルムから特急列車に乗ってボーレンゲ〈Borlänge〉へ。そこから西へ、バスに揺られること約40分。ダーラフローダを流れる美しいヴェステルダール川のほとりに、スウェーデンの伝統的な赤い家々が見えてきます。
スーパーICA(イーカ)前のバス停でバス降りて、はじめて足を踏み入れたダーラナの地。川と森と湖に囲まれた、スウェーデンの田舎の風景。絵本の中から出てきたような、素朴で、愛らしい、のどかな村。
ダーラフローダに訪れた旅人を出迎えてくれるのは、花模様のウールの刺繍。 この村の美しい伝統のひとつ、ポーソム〈Påsöm〉の刺繍を求めて、 小さな手工芸店フローダ・ヘムスロイド〈Floda hemslöjd〉と、毛糸工場ヴォルステッズ〈Wålstedts〉をめぐります。

2013 Photo & Text_Scandinavian fika.


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Dala-Floda 2

フローダ・ヘムスロイド

ダーラナの小さな村 ダーラフローダ〈Dala-Floda〉を訪れ、バスを降りると、最初に目にする赤い小屋。ここは村にひとつだけのおみやげ屋さん、手工芸店のフローダ・ヘムスロイド〈Floda hemslöjd〉。
ヘムスロイド〈hemslöjd〉とは手工芸や民芸という意味で、スウェーデンのいろいろな町にヘムスロイドと名前のつく手工芸店があります。
ダーラフローダの旅〈前編〉でご紹介した、フローダ教会や赤い橋と同じくらい、ダーラフローダを思い出す時にはじめに浮かんでくる可愛らしいお店。フローダ・ヘムスロイドは、昔ながらの伝統を守ろうとする村の人びとが集まって、手づくりの民芸品を扱っています。お店を運営するのは、フローダのハンドクラフトを残していこうとするボランティアさんたち。
小さなお店いっぱいに、花模様の可愛らしい民芸品が並んでいます。その中でも、特に目を奪われたのは赤と青の色あざやかな民族衣装。スウェーデンでいちばん美しい民族衣装に選ばれた、フローダのポーソム刺繍のドレスが、この村の歴史と未来をつむいでいるのです。

美しい民族衣装をまとったスウェーデン・テキスタイル専門家
アンナ・カーリン(右/Anna-Karin)と 彼女の親友のリル・カーリン

ポーソムの刺繍

フローダ・ヘムスロイドの店内には、お馴染みの木彫り馬のダーラヘストほか、白樺細工や編み物、織物など、村の女性たちがつくった手づくり民芸品が並びます。
ダーラフローダの民俗衣装のケープやスカートのベルト、エプロンにつけるポシェット、帽子や手袋にもほどこされている、野の花をあしらった色鮮やかなウールの刺繍はポーソム〈Påsöm〉と呼ばれていて、この村の美しい伝統のひとつ。やわらかな毛糸のポーソム刺繍にふれてみると、花や葉がふんわりと浮かび上がっているのがわかります。
黒いミトンのポーソム刺繍は、フローダ村のかわいい看板にもなっていて、ポーソムのタペストリーやカーテンも人気なのだとか。
スウェーデンでは長い冬のあいだ、家の中で刺繍や編み物をして過ごすことが多いのだそうです。ポーソムの可憐な花も、春の訪れを願って、一針一針思いを込めて指先から家の中へと咲かせてゆきます。
いつの時代も細い糸が人の心をつかむのは、そこに、確かな時が刻まれているから。いくつもの冬を越え、いくつもの春が来たから、フローダの村いっぱいにポーソムの花が咲いたのです。

フローダへスト

スウェーデンのダーラナを旅して、ダーラヘスト〈Dalahäst/ダーラナホース〉のおみやげを買って帰るのはマスト!フローダに着いた時はフローダ・ヘムスロイドがまだ開いてなくて、オープンを待ちながらそわそわ。窓から店内をのぞいたら、窓辺にグランナス〈Grannas〉のダーラナホースを見つけて、色や大きさなど、どれにしようかずっと悩んでました。
でも、もっとも頭を悩ませたのは、フローダのダーラヘストを見たとき!ナチュラルの無垢の木彫り馬の背中に、ポーソム刺繍の鞍をのせたフローダへスト〈Flodahäst〉の可愛らしいこと。刺繍が入ったものはお値段も高めなので泣く泣くがまんしましたが、やっぱり買っておけばよかった。
それから、ダーラフローダで受け継がれてきた伝統的なウールと麻の織物マットも素敵でした。スウェーデンのトーラスマッタ(裂き織りマット)もほしかったけど、フローダの伝統的な織柄に魅かれました(でも、やっぱりお高くて、スウェーデンクローナが足りず!)
フローダ・ヘムスロイドには村のガイドマップもあり、観光案内所のような役割も果たしています。持ち帰ったダーラフローダのパンフレットはお気に入りで、大切な宝物です。

毛糸工場ヴォルステッズ

ダーラフローダには、スウェーデンでいちばんの呼び声も高い人気の毛糸屋さんがあります。毛糸工場のお隣には農園レストランもあって、ランチがおすすめ!と聞いていたので、フローダ・ヘムスロイドから地図をたよりに歩いて行ってみることにしました。
フローダ教会から赤い橋を渡って、民芸館フローダ・ヘムビグスゴーデンを通りすぎ、ヴェステルダール川沿いの一本道を南東にてくてく歩くこと50分!(けっこう遠いけど行く価値あり)
道の途中、庭でFIKAしている赤い家々の家族に「Hej!(ヘイ!)」とごあいさつ(片手を軽く上げるのがポイント)。草原のひつじにも「Hej!」、馬にも「Hej!」。畑の道にぴょんと立っているニワトリのサインが見えて、毛糸工場は「こっちだよー」という矢印が出ていればもうすぐ。
野菜畑の広がる緑の中に、毛糸工場ヴォルステッズ・テキスティールヴェルクスタッド〈Wålstedts Textilverkstad〉がひっそりと建っています。家族で営む1935年創業の村の小さな毛糸屋さんは、スウェーデンだけでなく、世界の編み物作家やテキスタイル作家から支持を得ている人気の毛糸専門店。特別な輝きを持つという、毛糸のひみつを探ります。

毛糸のひかり

4世代にわたって受け継がれてきた、ダーラフローダの毛糸工場ヴォルステッズ。ロゴにひつじ、家族、ダーラナ、糸車が描かれているように、家族経営のヴォルステッズは工場というよりも、もっとアットホームな感じ。緑あふれるのどかな場所にファールン・レッドの赤いおうちがあり、そこがヴォルステッズの毛糸ブティック。
中に入ると、フローダの伝統的な編みものやスウェーデン製の織り機といっしょに、さまざまな色に染色されたウールが紙袋にどっさりと入っていました。不思議なのは、深みのある色あいのウールがきらきらと輝いていること。 ウォルステッズでは、スウェーデンのランドラース(国産種)の厳選した羊のウールを工場でつむいで染色し、毛糸に仕立てています。つややかな光沢が魅力の最高品質のウールは、独特の輝きとしなやかさを持っています。
ブティックに並ぶ豊富なカラーバリエーションの毛糸は、色を見ているだけで楽しくなります。混紡のミックスの色糸には「ラベンダー」「クラウドベリー」などの愛らしい名前がついていて、おみやげに「ラベンダー」「ローズ」「夏至の花(ミッドソンマルブロムスター)」のミックスの毛糸を買って帰りました。 

毛糸屋さんの農園レストラン

毛糸工場ヴォルステッズのまわりには農園が広がってます。毛糸ブティックの向かいには、採れたてのオーガニック野菜や果物、ハーブ、小麦粉、卵などの食材を直売するファームショップと、新鮮な野菜をふんだんにつかった料理が味わえる農園レストラン〈Wålstedts Gårdsbutik〉があります。
ヴォルステッズのファームショップ&レストランは小さいけれど雰囲気があって素敵で、窯から焼きあがった大きなまあるい田舎パンの香ばしい香りが漂っていました。田舎パンの横には、スウェーデンの伝統的な工芸品のブレッドバスケットや、可愛い食器がつまったホーンスコープと呼ばれる古い木製戸棚、卵といっしょに飾られたユニークな鉄細工の鳥のロウソク台など、心をくすぐるものばかり。
後で知ったのですが、この鉄の燭台はダーラナのテルベリ〈Tällberg〉で暮らし、レクサンド〈Leksand〉手工芸協会を設立した人物、グスタブ・アンカルクローナ〈Gustaf Ankarcrona〉がデザインしたものだとか。

毛糸工場、ファームショップ&レストランだけじゃなく、(写真の)ボーダー・コリーがしっぽをふっている奥の建物には、なんとサーカス学校〈Cirkusläger i Dala-Floda〉もあるのです!ウォルステッズって楽しい!


ダーラフローダの旅は、いよいよ後編「民芸あふれる100年の宿 ダーラフローダ・ヴェーズヒュース」へ。
2013年のスウェーデンの旅の終着点へと向かいます。


後編へつづく →

Dala-Floda

Dalarna|Sweden

ダーラフローダ

アクセス
ストックホルム中央駅から SJの特急列車で
北西へ約2時間半。
ボーレンゲ〈Borlänge〉駅で下車。
駅から252番バスで西へ約40分。
スーパーのバス停〈Dala-floda ICA〉で下車。

www.dala-floda.se

Dala-Floda Värdshus

民芸あふれる100年の宿
ダーラフローダ・ヴェーズヒュース
- 後編 -

ダーラナ・ダーラフローダの旅 3


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