北欧フィーカ|デンマーク・コペンハーゲンの旅|アルネ・ヤコブセンの606スウィート。|Scandinavian fika.

デンマーク・スウェーデン・フィンランド、北欧デザインの旅。

アルネ・ヤコブセンの606スウィート。

ラディソンSASロイヤルホテルに、どうしても泊まりたかったもう一つの理由。それは、建築当時のミッドセンチュリーのモダンデザインが残る606号室のヤコブセン・スウィートを見学するため。
1960年から今も変わらない「606ルーム」。ストライプのベッドの横には、オブジェのような、鮮やかなブルーのエッグチェア、スワンチェア、ドロップチェア。その他、AJカトラリーやステルトンのコーヒーポットなど、不朽の名作がショーケースに飾られています。
「完璧な美しさ」にこだわったヤコブセンの、究極のスウィート・ルーム。 蘭の香りに満ちた、至福のときが待っていました。

 

□写真左/ 淡いブルーグリーンの壁が、ヤコブセンのソファを美しく引き立てる


The Egg

未来のカタチ、エッグチェア

“たまご”のカタチをした美しいフォルム。体をすっぽりとやさしく包み込み、安らぎとくつろぎを与えてくれる優雅な椅子、ザ・エッグ(The Egg)。SASロイヤルホテルのためにデザインされ、当時最先端の発砲ウレタン成型でつくられた60年代のハイテクチェアです。名作アントチェア(The Ant)や、セブンチェア(Series 7)には座ったことがあっても、エッグチェアは初めてでした。だって、価格が70万〜100万円もする、とても高価なもの。ふつうの人が座れる機会なんて……と思っていたら、北欧の空港にも置いてあって、小さな子供がゆったりくつろいでいました。いつか、あの子が大きくなって、たまごの価値を知っても、その美しいデザインが色あせることはないでしょう。エッグチェアは時代の先を行く、未来のカタチなのです。

2010. update.

The Drop

涙のしずく、ドロップチェア

部屋のソファの横の小さなのテーブルには、涙のカタチをしたブルーのドロップチェア(The Drop)が置いてありました! 本でドロップチェアは見たことはあっても、女性のための化粧台の椅子としてデザインされたことを初めて知りました。それにしてもかわいい、“涙のしずく”。現在はつくられていない、とても貴重なものだとか。
子供の頃は顔が大きく、足が太いことを気にしていたというヤコブセン。とにかく頑固だったという男からは想像できないほど、優美で、気品に満ちたデザインを描きます。エッグやスワン、そしてドロップの曲線美は、女性の体のカタチのように美しい。「デザインとは、デコレーションではなく、プロポーションなのだ」そう言い放った彼の言葉に共感。その才能に惚れ惚れしました。

2010. update.

606 Room

昔のままのヤコブセン・スイート

275室の客室の中で唯一改装をしていない、建築当時のままの606ルームは、今でもヤコブセンファンの宿泊客で予約がいっぱいになるそうです。606ルームの見学は無料ですが、運よく部屋が空いていなければ中を見せてもらうことができません。何度もホテルのボーイさんから「ソーリー。リトライ」と断られ、見学を諦めかけていたら、こちらの気持ちを察してくれてか、ベッドメイキングのあと、特別に6階に案内してくれました! 北欧デザインの聖地ともいえる憧れのアルネ・ヤコブセン・スウィート。彼は蘭が好きだったらしく、606ルームにも紫の蘭の花。案内してくれたイケメンのボーイさんも、とても親切に接してくれました。感激してパシャパシャ写真を撮っていたら、6階に宿泊していた日本人の家族が「ちょっとだけ見せてもらってもいいですか」と入ってきて、「どうぞどうぞ」と一緒に見学。若奥さんは「毎年ここに泊まっているけど、この部屋を見るのに4年もかかっちゃったね」と笑っていました。ああ、見れてよかった!

2010. update.

Arne Jacobsen

アルネ・ヤコブセンが描いた「未来の家」

北欧デザインの巨匠、デンマークデザインの父とも呼ばれる、建築家兼デザイナーのアルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen)。 トータルデザインを手がけたSASロイヤルホテルほか、20世紀の新しいのライフスタイルを提案した「ベルビュー・ビーチ」の一大リゾートプロジェクトに着手。監視塔やシアター&レストラン、ベラヴィスタ集合住宅など、白く輝くモダンな建築群を世に生み出し、人々の心を躍らせました。 オーフス市庁舎の建設では、当時無名だった助手のハンス・ウェグナーが、ものづくりに対して妥協を許すことなく突き進むヤコブセンの姿に影響を受けたそうです。
「生まれ変わったら、庭師になりたい」と口にしていたヤコブセン。植物が描く自然のフォルムに惚れ込み、「この世でいちばん美しい植物」といってサボテンを愛したとか。
デンマーク「建築フォーラム」のコンペで、若き日のヤコブセンが描いた「未来の家」は、SF小説から飛び出したようなセンセーショナルな円の形をしていました。人類の理想の家を、何にも縛られずデザインする……もしかしたらヤコブセンは、時代を超えた、「未来の家」をずっと追い求めていたのかもしれません。

2010. update.

What is this silhouette?

このシルエット、何に見えます?

1Fのエントランスフロアの真っ赤な壁に描かれた線画。突然ですが、このシルエット何に見えます? ……そう!よく見ると、アルネ・ヤコブセンと名前が入っています。このホテルの、あの2つの名作に見えてきませんか? ヒントは鳥です。鳥の羽に見えてきたら、答えは簡単。正解は……エッグチェアとスワン!
3本足のアリンコチェアに、肘掛けがカモメの羽のガルチェア、牛の角をイメージしたオックスチェアなど、生きものをモチーフにした椅子がたくさんあります。どれも、モデルになったカタチが見えてくると、不思議と愛着がわいてきて、本物の生きもののようにかわいくて仕方なくなってきます。「物の大切さ」というものは、「そのもののカタチ」で決まってくるような気がします。それが、どれほど好きか。好きで好きでたまらないから、椅子を大事に、人はそれを後世に残したいと思うのです。

2010. update.

Cylinda - Line

シリンダ・ライン

デンマークのステンレス製のテーブルウェア専門メーカー、ステルトン(stelton)社のシリンダ・ライン(Cylinda-Line)。実はステルトン社の社長は、ヤコブセンの義理の息子。あるとき、息子からプロダクトデザインを頼まれたヤコブセンは多忙を理由に断り続けていました。でも、あるパーティーの席で諦めずに再度お願いしたら、ヤコブセンはかなり怒った様子で紙ナプキンにデザイン画をスケッチしました。これが、名作「シリンダ・ライン」の誕生秘話です。当時ステンレスでつなぎ目のないデザインを再現するのは、とても難しくて大変だったとか。
写真は工芸博物館の展示品。右から、コーヒーポット、ジャグ、ティーポット。ヤコブセンが息子の頼みを聞いたのは、ステンレスという素材が彼を引きつけたからだといわれています。

2010. update.

ステルトン

stelton

デンマークのステンレス製のテーブルウェアメーカー。ロングセラーのバキュームジャグも人気。
http://www.stelton.com

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