北欧フィーカ|『サーミの血』── 少女が願ったのは 自由に生きること|スウェーデン映画|北欧映画|Scandinavian fika.

デンマーク・スウェーデン・フィンランド、北欧デザインの旅。

スウェーデン映画『サーミの血』 少女が願ったのは 自由に生きること

北欧スウェーデン、知られざる迫害の歴史──
幻想的で美しい自然の大地ラップランドに、サーミの歌が響く

2016年 東京国際映画祭で審査委員特別賞と最優秀女優賞をW受賞!
北欧スウェーデンから届いた、監督自らのルーツに迫った渾身の感動作!

2016年東京国際映画祭で審査委員特別賞と最優秀女優賞をダブル受賞、北欧最大の映画祭のヨーテボリ国際映画祭2017では、前年度『ヒトラーの忘れもの』が受賞した最優秀ノルディック映画賞を獲得。
その他、世界の映画祭でも絶賛の声が相次ぐ本作は、北欧スウェーデンの美しい自然を舞台に描かれるサーミ人の少女の成長物語であり、差別に抗い生き抜く姿に心打たれる感動作である。

2017年9月16日(土)より、新宿武蔵野館、アップリンク渋谷ほか全国順次公開
映画『サーミの血』公式サイト・予告編
(C)2016 NORDISK FILM PRODUCTION.

□ 配給・宣伝:アップリンク

Sameblod

サーミの血

家族、故郷を捨ててでも
少女が願ったのは 自由に生きること


サーミ人とは、ラップランド地方、いわゆるノルウェー、スウェーデン、フィンランドの北部とロシアのコラ半島でトナカイを飼い暮らし、フィンランド語に近い独自の言語を持つ先住民族。映画の主な舞台となる1930年代、スウェーデンのサーミ人は他の人種より劣った民族として差別された。

監督のアマンダ・シェーネルはサーミ人の血を引いており、自身のルーツをテーマにした短編映画を撮った後、長編映画デビュー作となる本作でも同じテーマを扱った。

また、主演のレーネ=セシリア・スパルロクは、今もノルウェーでトナカイを飼い暮らしているサーミ人である。その演技を超えた佇まいは高く評価され東京国際映画祭では最優秀女優賞を受賞している。劇中の民族衣装、小道具、トナカイの扱いなどはすべて正確に再現されている。

音楽を手掛けるのは、ラース・フォン・トリアー監督の『ニンフォマニアック』(2013)、『メランコリア』(2011)、ニコラス・ウィンディング・レフン監督『オンリー・ゴッド』(2013)などに携わったデンマークの作曲家クリスチャン・エイドネス・アナスン。

  

STORY

忍び込んだ夏祭りで、
あなたに恋をした───私を連れ出して


1930年代、スウェーデン北部のラップランドで暮らす先住民族、サーミ人は差別的な扱いを受けていた。
サーミ語を禁じられた寄宿学校に通う少女エレ・マリャは成績も良く進学を望んだが、教師は「あなたたちの脳は文明に適応できない」と告げる。

そんなある日、エレはスウェーデン人のふりをして忍び込んだ夏祭りで都会的な少年ニクラスと出会い恋に落ちる。
トナカイを飼いテントで暮らす生活から何とか抜け出したいと思っていたエレは、彼を頼って街に出た───




「多くのサーミ人が何もかも捨てスウェーデン人になったが、私は彼らが本当の人生を送ることが出来たのだろうかと常々疑問に思っていました。この映画は、故郷を離れた者、留まった者への愛情を少女エレ・マリャ視点から描いた物語です」
───アマンダ・シェーネル監督

  

 

監督・脚本:アマンダ・シェーネル
音楽:クリスチャン・エイドネス・アナスン
出演:レーネ=セシリア・スパルロク、ミーア=エリーカ・スパルロク、マイ=ドリス・リンピ、ユリウス・フレイシャンデル、オッレ・サッリ、ハンナ・アルストロム
後援:スウェーデン大使館、ノルウェー王国大使館
配給・宣伝:アップリンク

2016年/スウェーデン、ノルウェー、デンマーク/108分/南サーミ語、スウェーデン語/
原題:Sameblod/DCP/シネマスコ─プ
(C)2016 NORDISK FILM PRODUCTION.

2016年 東京国際映画祭 審査委員特別賞/最優秀女優賞
2016年 ヴェネツィア国際映画祭 新人監督賞/ヨーロッパ・シネマ・レーベル賞
2016年 トロント国際映画祭 ディスカバリー部門 正式出品
2017年 ヨーテボリ国際映画祭 最優秀ノルディック映画賞/撮影賞
2016年 テッサロニキ国際映画祭 ヒューマン・バリュー賞
2017年 タイタニック国際映画祭 最優秀作品賞
2017年 ミネアポリス・セントポール国際映画祭 観客賞 ミッドナイト・サン 二位
2017年 ニューポートビーチ映画祭 外国映画賞
2017年 リビエラ国際映画祭 監督賞/観客賞
2017年 サンタバーバラ国際映画祭 最優秀ノルディック映画賞
2017年 シアトル国際映画祭 審査員大賞/最優秀女優賞
2016年 ハンブルグ映画祭 ヤング・タレント賞 ノミネート

Interview

アマンダ・シェーネル監督 &
主演 レーネ=セシリア・スパルロク
インタビュー

Amanda Kernell

監督・脚本:アマンダ・シェーネル

1986 年、スウェーデン人の母親とサーミ人の父親の元にスウェーデンで生まれる。2006 年以降、数本の短編映画を監督。2013 年、デンマーク国立映画学校の監督学科を卒業。『サーミの血』(2016)のパイロット版である短編『Stoerre Vaerie』( 2015)は、サンダンス映画祭でプレミア上映され、またヨーテボリ国際映画祭 2015 の短編観客賞、ウプサラ国際短編映画祭 2015 の最優秀短編賞など、いくつかの賞を受賞している。

 



Lene Cecilia Sparrok

主演 エレ・マリャ役
レーネ=セシリア・スパルロク

1997年、ノルウェー生まれ。サーミ人。ノルウェーのヌール・トロンデラーグ県で、家族とトナカイの飼育に従事している。南サーミ語を話せる俳優を探していたアマンダ監督にその才能を見出される。『サーミの血』(2016)が映画初出演。2016年東京国際映画祭で最優秀女優賞を受賞。

 

─監督のお父さんはサーミ人で、お母さんはスウェーデン人だそうですね。

アマンダ・シェーネル(以下、シェーネル):そうです。言語について言えば、スウェーデン人になりたかった祖父母がサーミ語を話すことをやめてしまったので、家ではサーミ語を話すことはありません。学校の母国語の授業で、サーミ語を読むことはしましたが。でも、父方の家族のほとんどは今もトナカイ猟師なので、私も親戚がトナカイを屠畜するところなどを見て育ちました。

─この映画は事実をもとにしている部分もあるのですね。

シェーネル:単なる作り話ではなく、私の一族の年長者たちから発想を得た部分が大きいのです。存命している老齢の親類の中には、自分もサーミ人なのにサーミを嫌う者がいます。つまり、アイデンティティを変えた者と、留まった者との対立が、私の一族の中にまだあるのです。両者は互いに話をしません。
それと、数年前に祖父母と、彼らの兄弟姉妹や彼らと同じ寄宿学校に行った人たちをインタビューしました。その時に聞いた話も、この映画の中に混ざっています。映画で描かれていることの中には、サーミの血を引くものなら誰でも、今も実際に体験することがあります。例えば、パーティーでヨイクを唄わされることなど、私もよくあります。

─主人公エレ・マリャは、単にスウェーデン人に同化したかったのではなく、自分の人生を自由に生きたかったように感じました。

シェーネル:同化はあくまで制度の一部であって、彼女がすべてを捨てる決断をした理由は、今の場所にいることが耐えられない、自分のルーツ以外への切望、といった思いの積み重ねもあったと思います。何もかもから離れ去るなどという辛く困難なことは、相当に強い意志がないとできませんから。私が掘り下げたかったのは、エレ・マリャがこの世界で誰になれるか、自分の居場所をどうやって見つけられるかでした。

─スパルロクさんは、エレ・マリャのどこが好きで、どこが嫌いですか?

レーネ=セシリア・スパルロク(以下、スパルロク):彼女が自分のやり方をつらぬくところが好きです。それから、妹を守るところも。故郷を離れるのはいいと思わなかったけれど。


シェーネル:登場人物たちについて、キャストと客観的に話し合うことはなかったですね。私が決めて限定したくなかったし、俳優たちに役を育てていってほしかったので。素人が多かったのですが、彼らは役にたくさんのものを加えてくれました。

─スパルロクさんはノルウェーで実際にトナカイ飼育してるそうですね。

スパルロク:私の家は、父と母と三姉妹でトナカイを育てています。姉はフルタイムでトナカイ飼育をしていて、妹はまだ寄宿学校に通っています。
私はまだトナカイ飼育を勉強中の身なので、毎日、飼育に関連した作業をしています。たとえば今の時期(8月)だと、9月の食肉解体処理に備えて柵を修理したり、トナカイが地区から出ないように見張ったりする仕事があります。

─監督はどうやってスパルロクさんをキャスティングしたんですか?

シェーネル:撮影の2年前からキャストを探し始めました。私自身、北部サーミ語がわからないので、南部サーミ語で作るつもりで南部サーミのネイティブを見つけたいと思っていたんです。サーミ語は9つあって、話す人口が一番多いのは北部サーミ語で、南部サーミ語は9つの中でも少数で、ネイティブスピーカーは500人くらいしかいませんが、流暢に話せる人はもっといると言われています。
南部サーミ人で、できれば姉妹で、トナカイ遊牧のこともわかっていて、演技ができて、という子を見つけるのは、絶対無理だろうなと思っていました。見つけられなければ、北部サーミの子に南部サーミ語を覚えてもらうしかないだろうと。でも、幸運にも、サーミ人の共同プロデューサーが、「ノルウェーにぴったりの姉妹がいるよ」と教えてくれたんです。

─スパルロクさんは完成した映画を観てどうでしたか?

スパルロク:2回観ましたが、自分をスクリーンで観るのに慣れていないから、「何やってるんだろう」と恥ずかしくなりました(笑)。妹が泣くシーンでは泣いてしまいました。私自身、寄宿学校に行くために家を離れなければならず、辛かった時の状況と重なって。

─オファーがあったらまた映画に出演したいですか?

スパルロク:さぁ、どうでしょう……。楽しかったし、もしかしたら、また出るかもしれません。でも、トナカイ放牧も続けたいと思ってるので、両立できたらいいです。ずっとトナカイ放牧で育ってきたので、その暮らしをやめてしまうと、多分、自分じゃなくなる気がすると思うんです。

シェーネル:主人公がなぜこんなに強いのか、とよく聞かれるのですが、サーミ族は、タフであるように親から教育されます。寄宿学校に入るのも強くないとダメだし、弱いといじめられるし。トナカイ放牧業も、ケガや死亡事故が多い、最も危険で過酷な仕事の1つですから。
撮影前、レーネとミーアの両方から個別に、「台本に泣くシーンがあるけど、私は涙は出ないと思う」と言われました(笑)。当時、ミーアはまだ11歳でしたけど。私もトナカイ放牧で育った父から、よく「泣くな」「涙はただの目の汗だ」と言われました。

※映画の情報について

『サーミの血』の映画情報や予告編、上映劇場・スケジュールなどは、映画『サーミの血』公式サイトをご覧下さい。
http://www.uplink.co.jp/sami/
2017年9月16日より、新宿武蔵野館、アップリンク渋谷ほか全国順次公開!

Tack!!

今回、映画の配給・宣伝のアップリンクさんよりお話をいただき、スウェーデン映画『サーミの血』のご紹介をさせていただくことになりました。とても光栄です。ありがとうございます! 私たちの知らないサーミやラップランド……スウェーデンがほんとうに好きだからこそ、観たい映画。観て、受け止めて、感じたい。一点の闇に見えるものも、もしかしたら、光かもしれない。