北欧フィーカ|日本とフィンランドをつなぐもの。ヘルシンキのデザインショップ common(コモン)|フィンランド・ヘルシンキ|Scandinavian fika.

デンマーク・スウェーデン・フィンランド、北欧デザインの旅。

日本とフィンランドをつなぐもの。ヘルシンキの common(コモン)

エスプラナーディ通りのアルテック(artek)から坂道を上がって南へ。アルテック・セカンドサイクル(artek 2nd Cycle)を通り過ぎて、ヨハネ教会のあるプナヴオリ地区に、日本人ご夫婦が営む日本の小さなデザインショップ common(コモン)があります 。

日本のアパレル企業BEAMSに勤めながら、将来は独立して店を持ちたいという夢を持っていた中村浩介さん。文化服装学院を卒業後、ディスプレー、映像関係を経てウェブマガジンを発行する会社に勤務していた中村雅子さん。ふたりは2000年の秋、日本を飛び出し、北欧をめぐる旅に出発します。
初めて訪れるフィンランド・ヘルシンキ。そこには、ふたりの人生を変える出逢いが待っていました……。

日本とフィンランドのつながりを見つけに。ヘルシンキの common へ。

□写真左/ デザインショップ common はヨハネ教会のすぐ近く。かもめ食堂のカハヴィラ・スオミへも徒歩3分。

common

コモン

ヨハネ教会(Johanneksen Kirkko)の近く、おしゃれなデザインショップが集まるヘルシンキのプナヴオリ地区に、日本の小さな雑貨店 common(コモン)はあります。日本人の中村浩介さん・雅子さんご夫婦が2007年に開業した common は、オープン以来、ヘルシンキで人気の日本のデザインショップ。あのテキスタイルデザイナー・ヨハンナ・グリクセン(Johanna Gullichsen)が「私のお気に入り」とおすすめするお店に興味津々。急遽、かもめ食堂のカハヴィラ・スオミに行く予定を変更しておじゃましました!
日本からはるばる海を越えてやってくるセレクトアイテムはいずれも、オーナーご夫妻がフィンランドの暮らしの中で「フィンランドに合うな、あったらいいな」と思うものばかり。白山陶器や今治タオル、懐かしのツバメノートもありました。
フィンランドや北欧デザインが日本で愛されるように、日本人とフィンランド人には、デザインを通して、通じ合うものがあるという中村さん。小紋柄や江戸小紋。日本らしい響きを持つ「コモン」というお店の名前には「共通する」という意味がこめられています。
日本とフィンランドをつなぐもの。それは、デザインを通して、何かが重なり合うような共通の感覚。日本から北欧へ移り住んだご夫婦が、フィンランドの暮らしの中で感じた、確かなもの。
ヘルシンキの小さな雑貨店に並ぶ日本のデザインひとつひとつに、「コモン」を見つけてみたくなりました。

2014.1. update.

Living in Finland

フィンランドで暮らしてみよう

中村さんご夫妻が、初めて北欧を訪れたのは2000年9月のこと。デンマーク、スウェーデン、フィンランドのデザインや建築を見てまわったあと、ふたりはなぜか、フィンランド人の国民性やライフスタイルに最も親しみを感じたそうです。
「ヘルシンキのアンティークショップで出逢った老夫婦に美術館への道をたずねたら、車で美術館まで送ってくれました」
その車のトランクには山盛りのキノコ!がのっていたのだとか。そう、老夫婦はキノコ狩りの帰りだったのです。
午前中は森へ行き、午後はアンティークショップや美術館へ出かける、そんな暮らし。この国の人びとのあたたかさやライフスタイル、自然との距離感に心から感動した中村さんご夫妻。「まずはフィンランドに住んでみよう。まず3年、暮らしてみよう」と決意し、2004年に語学留学。フィンランド東部のプンカハリュという小さな町の語学学校の寮に住み込んで、北欧の暮らしをスタートさせました。
2005年にタンペレに移り、浩介さんは職業高等専門学校でインターナショナルビジネスを専攻。雅子さんはウェブショップ カウッパトリ(KAUPPATORI)をオープンし、日本へ北欧ヴィンテージの輸出と販売をはじめました。
2007年、ヘルシンキに common をオープンしてから5年が過ぎ、今では3歳になる息子さんと家族3人でフィンランドの暮らしを楽しんでいるそうです。
フィンランドの魅力について、雅子さんはこう語ります。「一度フィンランドを訪れると、雑貨が自然や暮らしと密接につながっていることを感じられます。フィンランドを、きっと好きになるはず」

2014.1. update.

HAKUSAN PORCELAIN

白山陶器との出逢い

将来は日本の手工芸に関わる仕事がしたいという夢を持っていた、浩介さん。フィンランドのビザが下りるまでの間、中村さんご夫妻は、浩介さんの故郷である長崎で地場産業を見学してまわったそうです。common の人気商品、G型醤油さしの白山陶器との出逢いもそのころ。
石や竹のデザインをあしらった鈴木マサルさんのOTTAIPNU(オッタイピイヌ)のバスマットや、和紙でつくられた深澤直人さんのSIWAシリーズなど「和」のデザインアイテムが並ぶ中、特に興味深かったものは、白山陶器の茶器や平形めし茶碗。
わが家でも毎日ごはんを食べている愛用の平形めし茶碗に、ヘルシンキで出逢えるなんて感激!日本の急須や茶碗は、フィンランドの人たちにも人気なのだとか。
平形めし茶碗の底に入っている、ひらがなの「も」の文字。G型醤油さしのデザイナーでもある森正洋さんは、あのカイ・フランク(Kaj Franck)が日本に訪れたとき、「フィンランドに来て仕事をしないか」と誘った人物。それでも「日本でまだ成すべき仕事がある」と辞退した森さん。カイ・フランクが日本の民藝品に深い感銘を受けたように、「デザインの美」が日本とフィンランドをつなげているのです。
ヘルシンキで暮らしながら、フィンランドに住めば住むほど、逆に日本の良さも見えてくるようにもなったという中村さんご夫妻。
日本とフィンランドをつなぐ「common(共通感覚)」は、その心地よい響きとともに、これからふたりにとって、より確かなものへと変わっていくことでしょう。5年後、10年後の common が楽しみで仕方ありません。

2014.1. update.

common

コモン

2007年にヘルシンキにオープンした、日本人ご夫婦が営む日本のインテリアショップ common。
http://www.common-helsinki.com

Kiitos!!

今回、突然のお店訪問にも関わらず、笑顔で接してくださった中村浩介さん。本当にありがとうございました!これは言葉では伝えるのはすごく難しいのですが、お店のお話を聞かせていただいた時に「心地よい距離感」を感じました。それは、フィンランドで暮らしているからこその「距離感」であるように思えます。また、ヘルシンキに行ったらお会いしたいなぁ。