北欧フィーカ|スウェーデン・グスタフスベリの旅|グスタフスベリ陶磁器博物館。リンドベリの器と、リサ・ラーソンの猫。|Scandinavian fika.

デンマーク・スウェーデン・フィンランド、北欧デザインの旅。

グスタフスベリ陶磁器博物館。リンドベリの器と、リサ・ラーソンの猫。

ストックホルムから東へ20km。スルッセン(Slussen)から赤いバスに乗って見えてきたのは、ヨットハーバーと古いレンガの建物が並ぶ小さな港町、グスタフスベリ(Gustavsberg)。
北欧ミッドセンチュリーを代表する陶器ブランドとして黄金期を築いたグスタフスベリには、名作陶器が展示された博物館や、アンティークショップ、アウトレットショップがあり、世界中で愛されつづけるスティグ・リンドベリ(Stig Lindberg)の器や、リサ・ラーソン(Lisa Larson)の愛らしい動物たちのフィギュアが、今も工房で焼かれています。

リンドベリの葉っぱと、リサ・ラーソンの猫のひみつ。
「陶器の町」グスタフスベリをめぐる旅。

□写真上/ グスタフスベリ陶磁器博物館。若きリンドベリと、グスタフスベリの礎を築いたヴィルヘルム・コーゲ。

GUSTAVSBERG

陶器の町、グスタフスベリ

スルッセン(Slussen)駅からバスに乗って約30分。ファルスタ湾の湖に面した小さな港町グスタフスベリ(Gustavsbergs Hamn)が見えてきます。
1640年、ストックホルム近郊の港町にできたレンガ工場は、1825年に陶器メーカーとして生まれ変わり、「陶器の町」グスタフスベリとして発展してきました。1917年に迎えられた「スウェーデンの工芸デザインの父」ヴィルヘルム・コーゲ(Wilhelm Kåge)が、30年以上にも渡りアートディレクターをつとめ、グスタフスベリの名を世界的なものに押し上げると、1942年にはコーゲのアシスタントを努めていたスティグ・リンドベリ(Stig Lindberg)と共にグスタフスベリ・スタジオを設立。1950年〜70年代の輝かしい一時代を築きました。
リンドベリの葉っぱの器しか知らなかった、初めてのグスタフスベリの旅。水辺の景色と赤レンガの町を見た瞬間から、それは、陶器に込められたスウェディッシュ・デザインを知る旅となりました。

地下鉄スルッセン(Slussen)駅の高架下にあるグスタフスベリ行きのバス乗り場はちょっとわかりにくくて、迷ってしまう人も多いです。わかりやすいのは、地下鉄に乗ってスルッセン駅のホームに着いたら、すぐに改札を出ずに、一番下まで階段を降りましょう(※Nacka(ナッカ) Värmdö(ヴァルムドー)とサインが出ています)。地下の改札を出ると、ナッカ行きの青い電車や、グスタフスベリ行きのバスターミナルがあります。474番の赤バスで約30分。Farstaviken 駅で下車。

2014. update.

Porslinsmuseum

グスタフスベリ陶磁器博物館

グスタフスベリが創設された1825年からの名作食器やアート作品が年代順に展示された、グスタフスベリ陶磁器博物館(Gustavsbergs Porslinsmuseum)。リンドベリの器からリサ・ラーソン(Lisa Larson)のフィギュアまで。世界中から今も愛されつづける北欧ミッドセンチュリーの器や、貴重なアートピースを見ることができます(入場料/60SEK)。
博物館はもともとグスタフスベリ社の工場だった建物を再利用したもの。スカンジナビアアートの代表として一時代を築いたグスタフスベリ陶器工場は、1970年代に経営危機に陥り、1987年に買収され、工場は閉鎖されました。けれども、リンドベリの作品をはじめとするグスタフスベリの名作陶器は、世界中の愛好家からの強いリクエストにより復刻されました。「永遠のミッドセンチュリー」として愛される器が美しいのは、スウェーデンの日用品の中に「暮らしの美」が宿っているから。ヴィルヘルム・コーゲからスティグ・リンドベリへと受け継がれたデザインとは、人びとの暮らしを明るく豊かにするもの。身近で、使いやすく、いつまでも長く愛されるものだったのです。
1996年に新会社グスタフスベリ・ポスリーンが設立され、現在はリンドベリの復刻版や、伝統の復興に力を注いでいるそうです。リンドベリの陶板が飾られたグスタフスベリ・スタジオは、その後リサ・ラーソンのリプロダクションを生産する工房となり、今は若手作家のアトリエとして使われているのだとか。

2014. update.

Antikhuset

リサの工房とアンティークヒーゼット

グスタフスベリ陶磁器博物館の1階には、リサ・ラーソンのフィギュアやグッズが買えるミュージアムショップがあります。受付の奥には、お皿やマグカップに絵付けできる体験教室もあって、絵筆が並んでいました。器にオリジナルの絵付けをしたら、グスタフスベリの窯で焼いてくれるみたい。(ただ、焼き上がるまでに何日もかかるというウワサも……)
博物館のとなりには、リサ・ラーソンの工房「ケラミーク ストゥディオン(Keramik Studion Gustavsberg)」があります。小さな工房ですが、お馴染みのリサのフィギュアができるまでの作業工程を見学することができます。リサ・ファンなら工房近くのアンティークショップ「Värmdö Antik」も必見!リサのアイテムの品揃えは世界一とも。
そして忘れてはならないのが、グスタフスベリの敷地内の小高い丘の上に建つアンティークショップ「アンティークヒーゼット(Antikhuset)」。1850年頃からのアンティークが並ぶ店内では、コーゲやリンドベリの名作ほか、黄金期のグスタフスベリ陶器工場で彼らと共に活躍した「ろくろの魔術師」バーント・フリーベリ(Berndt Friberg)や、コーゲの最後の弟子カーリン・ビョルクヴィスト(Karin Björquist)の作品に出会うことができます。
(※アンティークショップではクレジットカードが使えない店も多いので、もしアンティークハントにでかけるなら、スウェーデンクローナ(SEK)を多めに持っていった方がいいかも)

2014. update.

SPISA RIBB

リンドベリの器

1916年、スウェーデン北部の地方都市ウオメで生まれたスティグ・リンドベリ(Stig Lindberg)は、小さい頃から絵を描くことに夢中だったといいます。1937年にグスタフスベリに入社すると、1949年にヴィルヘルム・コーゲの後を継いでアートディレクターに就任。北欧ミッドセンチュリーを代表するブランドとなったグスタフベリの黄金期を支え、戦後のスウェーデンにおいて、もっとも人気のある陶芸作家の一人として活躍したリンドベリ。その個性的でモダンなデザインは、今もなお、まばゆいばかりの輝きを放っています。
大きなリーフを描いた彼の代表作ベルサ(Berså)や、「柳の葉」をデザインしたサリックス(SALIX)。フリーハンドで描かれたファイアンス(Fajans)の優美でアーティスティックな装飾にうっとり。リンドベリの器には楽しさと、美しさと、遊び心があって、愛にあふれています。それは、リンドベリの器に出会ったものだけがわかる、ほんものの輝きなのです。
今はリンドベリの器はひとつも持っていないけれど、いつか、ショコラカラーのラインが入ったスピサ・リブ(SPISA RIBB)のカップでコーヒーを飲むのが夢です。

2014. update.

Lindberg and Larson

リンドベリとリサ・ラーソンの出逢い

アストリッド・リンドグレーン(Astrid Lindgren)のお話に出てくる、絵に描いたような田舎で育ったというリサ・ラーソン(Lisa Larson)。1931年にスウェーデン南部のスモーランドで生まれたリサは、小さな頃からペンナイフで木を削って人形をつくっていたそうです。まさか木の彫刻が、陶芸家としての人生を決めてしまうなんて思いもしなかったはず。
ファッションイラストレーターに憧れたリサは、西海岸のヨーテボリの大学に進学するため、作品の一つである木の彫刻を送りました。結果は見事合格。でも、どういうわけか大学では陶芸クラスに配属されてしまったのです。運命とは不思議なもので、陶器工房に入った時の匂いと、初めて触った土の感触に、「陶芸家になる」と心に決めたリサ。彼女はヨーテボリで、最愛の夫となるグンナルとの運命の出逢いも果たします。まだ学生だったふたりは1952年に結婚。その頃、画家のグンナルが描いた初々しいリサの肖像画は、今もふたりの家のリビングに飾られています。
大学卒業が間近になったある日、北欧の美術大学の公募展でリサの作品を見た審査員から招待状が届きました。「いっしょにグスタフスベリのアトリエで働かないか」……そう、その手紙を送ったのは、当時グスタフスベリのアートディレクターとして活躍していた、あのスティグ・リンドベリだったのです。

Photo by「lisalarsonsweden.com」

2014. update.

Lilla Zoo

リサ・ラーソンの猫

1954年にリンドベリに誘われてグスタフベリに入社したリサ・ラーソン。最初の1年間は、リサは3人の若手アーティストたちとアトリエをシェアして、何の課題もなく、好きなものを作っていればよかったそうです。その頃にリサが作ったのが、大好きな「猫」のフィギュア。たまたまそれを見たリンドベリが「これに合うように他の動物も作ってみなさい」といってはじまったのが、リサの最初のシリーズ「小さな動物園(Lilla Zoo)」。動物をモチーフにしたリサのフィギュアは数多くあるけれど、「小さな動物園」こそ、彼女の原点ともいえる作品。
リサと夫グンナルのために、リンドベリが自宅のとなりの家を提供してくれたというくらい、プライベートでも親しかった二人。リサはリンドベリへの感謝を忘れず、「本当に彼は寛大で、若い人たちにチャンスを与え、信頼してくれる貴重な人だった」と語っています。
スウェーデンを代表する人気陶芸家となったリサ・ラーソンは、フリーランスを経て、またグスタフベリの工房に戻ってきました。
リサの変わらない魅力と愛らしさは、彼女のつくるセラミックそのものにあらわれています。「昔からフィギュアといえば白い磁気ばかりで高尚なイメージだったけど、私が求めていたのは、もっと素朴で、飾り気のない雰囲気。粗めで鉄分を多く含んだ土。柔らかい赤や黒みを帯びた茶色……」
「Lilla Zoo」の猫がリサの作品の中でいちばん好きなのは、リンドベリが見出した、若きリサ・ラーソンの原点がつまっているから。

2014. update.

Berså

ベルサは「葉っぱ」ではない!?

「陶器の町」グスタフスベリのあちこちで見かける、みどりの葉っぱのデザイン。1960年にスティグ・リンドベリが発表したベルサ(Berså)シリーズは、スウェーデンのことをまだよく知らないころから、北欧テーブルウェアのアイコンのような存在でした。日本でも大人気のベルサを求めて、グスタフスベリやロッピス(蚤の市)を訪れる人も多いはず。
でも、実はベルサ(Berså)って「葉っぱ」のことではないって知ってました? 初めて知った時はちょっと驚きました。だって、ウェブやカタログの紹介文では「葉っぱを意味するベルサ」と書かれているのですから!
教えてくれたのは、Fukuya(フクヤ)さん。北欧ヴィンテージショップを営むフクヤさんは、北欧の器を取り扱うだけでなく、北欧の歴史や北欧デザインが生まれた背景を、ブログでとても丁寧につづられています。北欧について、フクヤさんに教えてもらったことがどれほどたくさんあることか!なので私は、「Berså」について、フクヤさんの言葉を信じます。
「Berså は日本語にしづらい言葉ですが、発音は「ベショウ」に近いです。Berså とは、家の庭などで緑にかこまれた休憩所をさします。冬が長い北欧で、緑があふれる季節に光を楽しむ習慣が生んだ言葉なのでしょう。だから、葉っぱの柄なのだと思います。なので、あえて訳すとすれば『木陰の休息所』でしょうか」

2014. update.

Gustavsbergs Porslinsfabrik

グスタフスベリ・アウトレット

バスの通りから見える、赤レンガの三角のギザギザ屋根。その昔、工房だったレンガ造りの建物は、グスタフスベリ・アウトレット(Gustavsbergs Porslinsfabrik)。お馴染みの錨のロゴと「Butiken」と書かれた小さな入口の扉をあけると、リンドベリの器がずらり!山積みになっています!
憧れの北欧食器が、お手頃な価格(日本の復刻版と比べると半額くらいの安さ)で買えちゃうのは魅力ですが、アウトレット品なので柄のかすれやズレがあるものが多いです。山積みの中から、できるかぎり良い物を探しましょう。
グスタフスベリ陶磁器博物館を見学したあと、イッタラ(iittala)のアウトレットにも行ってきました。イッタラとアラビア(ARABIA)のほか、ペルゴラ(Pergola)をはじめとするロールストランド(Rörstrand)の器もたくさん並んでいました。マリアンヌ・ウエストマン(Marianne Westman)モ ナミ(MON AMIE)はおみやげにほしかったけど、ヒョートリエットのロッピス(蚤の市)でのピクニック(PiCKNiCK)事件のことがあったので、マリアンヌには申し訳ない気持ちでいっぱいでした。「モ ナミ」とすら、まともに目を合わせられなかったです。
あ、そうそう、ロッピスといえば、年に数回グスタフスベリのロッピスも開催されるみたい!

2014. update.

Cafe Tornhuset

シナモンとカルダモンのブッレ

グスタフスベリ陶器博物館を見学して、アンティークショップやアウトレットショップをめぐったあとは、テラスで水辺の景色を楽しみながらフィーカはいかが?
ヨットハーバーがあるグスタフスベリ港沿いに建つ塔のような可愛いレンガの建物。金色のプレッツェル(?)の看板がぶらさがったカフェ・トルンヒュートセット(Cafe Tornhuset)。ここのスウェーデン風のシナモンロールのカネルブッレ(写真)と、カルダモンブッレはおすすめ!カルダモンのパンなんて北欧に来るまで食べたことなかったけど、スパイシーなカルダモンブッレにすっかりハマってしまいました。
ランチなら、グスタフスベリ陶器博物館のすぐ横にあるビストロ・グスタフスベリ(Bistro Gustavsberg)も人気みたい。

グスタフスベリには半日くらいいましたが、アンティークショップやアウトレットをいろいろ見てまわろうすると、ぜんぜん時間が足りませんでした!ストックホルム中心地からも少し離れているので、時間に余裕を持ってでかけましょう。スルッセン(Slussen)からバスに乗るので、グスタフスベリからバスで帰ってきたら、日が暮れるまでスルッセンがあるセーデルマルムか、ガムラ・スタンを散策するのがよいかもしれません。

2014. update.

グスタフスベリ

GUSTAVSBERG

スウェーデンを代表する陶磁器メーカー。現在はスティグ・リンドベリの復刻版など、伝統の復興に力を注いでいる。

リサ・ラーソン

Lisa Larson

スウェーデンを代表する陶芸家リサ・ラーソン。丸いフォルムの可愛い動物たちのフィギュアが人気。
http://www.lisalarsonsweden.com

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