北欧フィーカ|フィンランド・フィスカルスの旅1(前編)|フィンランドの小さなアーティスト村、フィスカルス。|Scandinavian fika.

デンマーク・スウェーデン・フィンランド、北欧デザインの旅。

フィンランドの小さなアーティスト村、フィスカルス。

ヘルシンキから西へ85km。中央駅からトゥルク(Turku)行きの特急列車に乗ってカルヤー(Karjaa)まで。そこからバスに乗って20分。デゲルショー湖(Degersjön)へとつづく川のほとりに、100人以上のアーティストが暮らす村、フィスカルス・ビレッジ(Fiskars Village)があります。
かつては製鉄業で一時代を築いたフィスカルス。時代の変化とともに、廃村に追い込まれた村を救ったのは、アーティストたちでした。

森と湖につつまれた小さなアーティスト村、フィスカルスを訪ねて。

<フィスカルスの旅1 前編>
>> フィスカルス編(後編)と合わせてご覧ください。

□写真左/ 村の古い公衆電話は、フィスカルスのアイコン

Fiskars Village

フィスカルス・ビレッジ

森と湖に囲まれたフィンランドの小さな村のことを、ずっと胸の奥にしまっていました。かつては製鉄業で一時代を築いた村。その後、一度廃墟になりかけて、アートでよみがえった村。今では100人以上のアーティストが暮らす、フィスカルス(Fiskars Village)。日本でもフィスカルス村を紹介しているものはいくつかあったけど、何かぼんやりしていて、どんな村のなのか想像ができなかった。はっきりしていたことはただ一つ。フィスカルスが、次の北欧の旅の出発点になるということ。

ヘルシンキから西へ85km。ずっとずっと行きたかったフィスカルスへ旅にでます。中央駅からVRの近郊列車 Inter City(二等車/€20.3)に乗って1時間。カルヤー(Karjaa)駅で下車。そこから、フィスカルス行きのバス(€4.7)に乗り換えて走ること20分。
フィンランドの森と湖。パステルカラーの可愛い家や庭、満開のライラックが瞳の中へ飛び込んできます。バスに揺られる時間さえ夢心地。ゆるやかな川の流れに沿うように道をすすむと、あふれる緑の中にフィスカルス村のあの時計塔が見えてきました。

(※最寄りのカルヤー駅で列車を降りたら、クリーム色の駅舎ではなく、線路の上を通っている高架橋へ上がってバス停へ向かいましょう。列車とバスの乗り換え時間が短くても、この親切なブログを見れば迷わず行けるよ!)

2015. update.

Clock tower building

フィスカルスの時計塔

むかしは学校の校舎だった赤いレンガのフィスカルスの時計塔。村のランドマークになっている時計塔の前には、きれいな小川が流れています。この川はビルネス(Billnäs)という近くの村まで続いているのだとか。かつて製鉄所があったフィスカルスとビルネスの2つの村では、毎年夏にフィンランド最大のアンティークマーケット(骨董市)が開かれます。年間10万人の観光客が訪れるというフィスカルスは、フィンランドでも人気の村なのです。
でも私が訪れた6月のウィークデーは、観光地とは思えないほど静かで、のどかで田舎の風景があるだけでした。カルヤー(Karjaa)から乗ってきたバスは、夏にマーケットが開かれる広場の前に到着。観光客も数えるほどで、バス停前のツーリスト・インフォメーションもまだ開いていません。フィスカルス川に沿って時計塔まで歩くと、製鉄所時代に造られた歴史ある建物が木立の間から見え、小川には赤い花が飾られた小さな橋がかかっています。川面に鏡のようにうつる、木々のきらめきにうっとり。この村の美しさは、川とともにあるのです。

(※マーケット広場のバス停に着いたら、まず帰りのバスの時間を確認しましょう。夏季のタイムテーブルでは、カルヤーまでのバスは1時間に1本。最終は17:20 フィスカルス発でした。フィスカルス・ビレッジのMAPはバス停前の観光案内所ほか時計塔にもおいてあります)

2015. update.

Artists village

製鉄の村から、芸術の村へ

自然が豊かで水が豊富にあることから、かつては「製鉄の村」として栄えたフィスカルス。オレンジ色のハサミで有名な「FISKARS」社創業の1649年から、スウェーデンで採掘された鉄鋼と、村の周辺で採れる銅を運んできて、鉄製品や銅製品を造りはじめたそうです。
やがて「FISKARS」社が工場をアメリカへ移転したことにより、廃村に追い込まれたフィスカルス。でも、村のありのままの美しさと、19世紀につくられた歴史ある建物群に魅了された数人のアーティストたちがフィスカルスに移り住み、製鉄所跡や倉庫、古い民家などをリノベーションして、アトリエやギャラリー、ショップへとよみがえらせました。それが、アートヴィレッジとして生まれ変わったフィスカルスのはじまりです。
今では100人を超えるアーティストがフィスカルス村で暮らし、豊かな自然の中で作品づくりに励んでいるそうです。ただのどかに見えるこの村にも、洗練された何かが宿っています。「製鉄の村」から「芸術の村」へ。アートとデザインが、小さな村を変えたのです。

時計塔のとなりにあるクリーム色の建物(写真)は製鉄工場で働いていた人たちの元住宅。今ではジュエリーや雑貨などフィスカルスにアトリエを構えるアーティストたちのショップやギャラリーが入っています。中でも手づくりチョコレートのお店 ペトリス チョコレート ルーム(Petris chocolate room)はおすすめ!

2015. update.

Fiskars 1649

オレンジのハサミ

はじめて「フィスカルス」という名前を聞いたとき、まっさきに浮かんできたのがオレンジのハサミ!フィスカルスを訪れたら、おみやげにオレンジハンドルのハサミを買って帰ろうと思ってたけど、こんなにいろんな種類があるとは知らなかった。大きさやカタチもいろいろ。子供用の小さなムーミンのハサミから、園芸用の大きな枝切りばさみまで。
時計塔の中には、フィスカルスショップやフィスカルスの歴史を紹介した展示スペース「フィスカルス1649」があって、製鉄の村だった頃のフィスカルスがミニチュアで再現されています。18世紀から20世紀初頭にかけて造られた古い建物が今でも多く残っているので、村を散策する前にミニチュアを見ておくと、マップを見るよりも村全体がとってもわかりやすい。
時代とともに変わっていったフィスカルスのハサミの歴史を見学したあと、定番のオレンジののハサミを購入(これが、めちゃくちゃ切れ味いい!)。おみやげに、ムーミンのハサミも買っておけばよかったな。
ちなみにフィスカルスショップには、アラビアのムーミンマグやイッタラ(iittala)のショップも入っています。

2015. update.

ONOMA

オノマ

フィスカルス村でつくられた質の高いアートやクラフトは、時計塔の ONOMA(オノマ)ギャラリーショップで見ることができます。ONOMAはフィスカルス・アーティスト組合が直営するショップで、フィスカルスで制作しているアーティストの作品を展示販売しています。カミラ・モーベルグ(Camilla Moberg)のガラスや、陶磁器やニットやテキスタイル、絵画やオブジェやアクセサリー、鉄のアート、木目が美しいニカリ(NIKARI)の家具も素敵でした。
ONOMAでお気に入りの作品を見つけたら、フィスカルス村に点在するアーティストのアトリエまで足を伸ばしてみましょう。アーティストの工房ではワークショップも開催しているそう。ガラスを吹いたり、鉄を打ったり、木を削ったり、アーティストとふれあえるワークショップも楽しい体験(※要予約申込)
旧穀物倉庫ではフィンランド屈指のエキシビジョン、毎年恒例のONOMA(フィスカルス・アーティスト組合)の美術展の開催されます。フィスカルスが誇る最大のエキシビジョンスペースでは、2015年夏の展示会「WE LOVE WOOD(S)」が開催されていました。フィンランドデザインの最先端にふれることのできる場所。アートコミュニティとしての魅力が、フィスカルスを世界にひとつだけの村にしています。

2015. update.

Fiskars Wärdshus

美食のホテルとレストラン

旧カトラリー工場だったフィスカルスフォーラムの後ろには、むかし製鉄工場として使われていた建物があり、ここは1994年にフィスカルスで初めて展示会が行われた記念すべき場所。1800年代初頭に造られた由緒正しい建物は、今は人気のレストラン・クパリパヤ(Kuparipaja)になっていて、夏は川沿いのテラス席でランチがおすすめ!
メインストリートには、上質なおもてなしと美食が味わえる1836年創業の老舗ホテル、フィスカルス・ヴァルツフス(Fiskars Wärdshus)があります。ヴァルツフスの自慢のレストランはほんとうに美味しくて、アーティストたちの社交場にもなっているのだとか。
フィスカルスの旅はヘルシンキからの日帰り旅行。でも、できればヴァルツフスに1泊して、もっとゆっくり村を見て歩きまわりたかった。フィスカルスは小さな村なので、マップにあるショップやアトリエをまわるだけなら日帰り旅行でも十分楽しめます。でも最高の贅沢は、この村の自然とアートの中でゆったりとした時間を過ごすこと。アーティストたちが暮らしながら作品をつくり、自然からインスピレーションを受けるように、フィスカルスの穏やかな時の流れを全身で感じること。

実は、私がフィスカルス村にやってきたのは、観光のほかにもう一つ理由があります。ある人にお会いしたかったから。フィスカルス村にひと夏だけオープンしたレストラン、ラヴィントラ「北むら」(Ravintola Kitamura)のことは、また次のお話で。後編につづく。

2015. update.

フィスカルス・ビレッジ

Fiskars Village

100人以上のアーティストが暮らす、フィンランドの小さな村フィスカルス(日本語サイトあり)
http://www.fiskarsvillage.fi

オノマ・ギャラリーショップ

ONOMA

フィスカルス・アーティスト組合が直営するショップ。旧穀物倉庫でエキシビジョンも開催。
http://www.onoma.org

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