北欧フィーカ|『イイダ傘店のデザイン』と、平成二十六年・秋の雨傘展へ。|日本・Made in Japan|Scandinavian fika.

デンマーク・スウェーデン・フィンランド、北欧デザインの旅。

『イイダ傘店のデザイン』と、平成二十六年・秋の雨傘展へ。

平成二十六年の春に届いた一冊の本。恵文社・一乗寺店で予約しておいた特典付きの限定版。本の表紙と同じテキスタイル『森の花』のミニポーチは、本をまるごと一冊すっぽり入れて外へ持ち出せます。庭に出て、木漏れ日の下で待ちに待った本のページめくると、そこには傘作家・飯田純久さんの傘づくりの歩みや、傘や布のデザイン、スケッチ、アトリエ……うきうきと心躍る、傘のある世界が広がっていました。

「平成二十六年・春の日傘展」から半年。ふたたび京都・一乗寺「恵文社」へ向かいます。
「イイダ傘店のデザイン」の世界に、飛び込んでみませんか?


□写真左/ 大根、がんも、玉子、はんぺん、もちきんちゃく……衝撃のおでん柄!薄味の京風か、秘伝のつゆか。

>> イイダ傘店の過去の展示会の模様と合わせてご覧ください。

Swan

少年とスワン

「平成二十六年・秋の雨傘展」には、イイダ傘店さんの本『イイダ傘店のデザイン』を読んで、初めて傘展に訪れた方がたくさんいらっしゃったようです。
お店を構えずにオリジナル傘を制作しているイイダ傘店さんの作品に出逢えるのは、年2回の日傘・雨傘の展示受注会だけ。見逃してしまった過去の作品や、傘づくりについて、「イイダ傘店」のことを深く知ることできる本は、ずっと待ち望んでいた一冊。この本が出版されたことは、いつも楽しみな「イイダ傘店」の案内状が、日本中に届けられたようなものです。
秋の京都。一乗寺にある日本でいちばん素敵な本屋さん、恵文社のギャラリーアンフェールの扉を開くと、かわいいスワンボートが私を出迎えてくれました。湖を水彩のタッチで描いた新作テキスタイル『スワン』。青と黄色の、あまりにも微笑ましい傘を見ていたら、本の「はじめに」つづられた、イイダさんの言葉を思い出しました。

─── 子供の頃に、お気に入りの傘を持ったときの「雨、降らないかな?」
あの心躍る感じ。
赤い傘? 青い傘? 僕は黄色い傘だった。

スワンの黄色い傘を持って、雨を待つ、子供の頃のイイダさんが、ふわっと頭の中に浮かんできました。空を見上げて願っています。
「あした、雨になぁれ」

2014.9. update.

Umbrella of made-to-order

世界にひとつだけの傘

一生ものの傘をつくるのは、イイダ傘店さんだけではありません。あなたも、イイダ傘店さんといっしょに傘をつくるのです。オーダメイドの傘づくりは、新作や定番のお気に入りの傘の柄を選ぶところから始まります。傘の柄が決まったら、次は色。傘のテキスタイルには2〜3色のカラーバリエーションがあって、あー、もう、選ぶのが悩ましい!
柄と色を決めたら、次は傘のサイズ。大きめがいいか、小さめがいいか。折りたたみにするかどうするか。続いては、傘のパーツ。1点1点が工芸品のような傘の手元や、傘職人から「ツメ」という愛称で呼ばれる露先(つゆさき)、そのほか、ボタン、房飾り、プレートに名入れ………途中でくじけちゃいけません。傘ととことん向き合わなきゃダメです。悩んで悩んで、傘の仕上がりをイメージして、自分の直感を信じましょう。もしかしたらその傘は、明日から、あなたの暮らしを変えてくれるかもしれません。友達のような、恋人のような、家族のような、そんな傘。大切な傘。
できあがりは、オーダーしてから2〜3ヶ月後。傘が届く日。そのとき。あなたは、気がつくでしょう。
「これが私の傘!私が会いたかった傘!」
抱きしめていいんです。ひらいて、とじて、ひらいて。傘の下につつまれていいんです。今度はあなたが、傘を育む番。世界にひとつだけの傘に、愛をこめて。

2014.9. update.

Spice

あなたにスパイス

ポストに届いた秋の雨傘展の案内状。窓のようなまあるい穴から、今にも飛び出しそうな木の実が……もしや、これはカルダモン!!
ピンクペッパー、レッドペッパー、シナモン、ローズマリー、ローレル……スパイスの実やハーブのスケッチが並んだ新作テキスタイル『スパイス』。今回の案内状には、人によっていろんなスパイスが入っていたそうです。今にもふんわりいい香りがただよってきそうな、「ミント」と「ブラック」の2色の『スパイス』傘。傘柄と同じ、丸めて小さくなるお買い物袋、『スパイス』のケータリングバッグも新登場!スーパーでスパイスを買って『スパイス』バッグに入れたら、帰り道が楽しそう。
でも、『スパイス』よりも、もっとスパイシーなものが目に飛び込んできました。ちくわ、こんにゃく、大根、がんも、もちきんちゃく……おでん種が勢揃いの、衝撃の『おでん』傘!!薄味の「京風」と「秘伝」のつゆの2色。なんと、傘をとめるボタンはカラシでできているではありませんか! 斬新すぎる。もし『おでん』傘をさしている人を町で見かけたら、それこそ衝撃です。いったい誰が、おでんの具が傘になることを想像できたでしょう。イイダ傘店、おそるべし!来年の秋には、真っ白な『湯豆腐』の傘や、緑の水菜をちらした『はりはり鍋』の傘が登場しても不思議はありません。
「かわいい!かわいい!」と、おでん柄に夢中になる女子たち。もう何十年もおでんを食べ続けて、その「かわいさ」に気づかなかった私。おでんのことを全部知ったような気でいた私。そのかわいさあまり、おでんのポストカードを買ってしまった私。今日も『おでん』が、頭から離れません。

2014.9. update.

Hippopotamus

カバのスケッチ

「カバだ!」といって、上野動物園へカバをスケッチしに出かけてゆきました。楽しそうに、そう話してくれたのはイイダ傘店のスタッフ・タカヤマさん。大人気の『動物手元の傘』など、動物をモチーフにした傘はこれまでもあったけれど、今回はイイダさんが上野動物園で描いた『カバ』のスケッチをそのまま活かした、ほんわか、やさしい傘。カバのなんともいえない表情がたまりません。
『イイダ傘店のデザイン』の本の中にも、イイダさんのスケッチがたくさんのっています。テキスタイルデザインはすべて手書。傘展に展示された原画のスケッチを見るのも、楽しみのひとつです。
そんな『カバ』の誕生秘話を教えてくれたタカヤマさんは、美大生だった大学時代に「イイダ傘店」と出逢い、傘づくりの世界に飛び込んだそうです。心の中で「傘だ!」、自分がやりたいことはこれだ、そう思ったそうです。
「どの傘がいちばん好き?」と聞いてみたら、いちばんは選べないなぁと困った顔をしてから、「ポピー」と答えてくれました。『ポピー』は折り紙を1枚1枚ちぎって原画をつくった傘。緑の原っぱに咲く一輪の花、ポピー。折りたたみ傘として、タカヤマさんも日々愛用しているのだとか。
好きなものを見つける幸せ。やりたいことに出逢える幸せ。毎日の小さなところに隠れている幸せ。今日はポピー、明日はカバ……。
「やっぱり、いちばんは選べない」
そういって微笑んだタカヤマさんの髪には、今日もへアターバン。『トウモロコシ』の刺繍が、とっても素敵でした。

2014.9. update.

Circus!

傘をひらいて

幾何学模様が大好き。特に傘のテキスタイルは、ひらいた時に模様がパッと広がって、とじている時とまったく違う世界を見せてくれる。サーカスのテントをイメージした新作の幾何学模様の傘『サーカス』。去年、ほしくてたまらなかった赤と青の『色えんぴつ』の傘に続き、カラフルなサーカスのテントにすっかり魅せられてしまいました。
傘展では、本当はぜんぶ傘をひらいて見てみたいけれど、他のお客さんに申し訳なくて、ずっと遠慮していました。でも、そんな私の思いを察してか、イイダ傘店のスタッフ・ハヤセさんが、新作『野いちご』の傘をひろげて見せてくれました(トップの写真)。ブルーベリー、ラズベリー、グリーンベリーの3色。ジャカード織りの『野いちご』の傘は、表と裏でカラーが反転していて、草原に実る野いちごの色が、裏側で野原のように広がります。
布づくりについてもハヤセさんは丁寧に教えてくれました。傘の織物には「ジャカード織り」の他に、『積み木』のテキスタイルでつかわれた「カットジャカード織り」や、『イチョウ』でつかわれた「ほぐし織り」など、いろんな技法があること。布づくりの現場では、イイダさんと「型」「染め」のベテランの職人さんたちが熱い意見を交わしながら、あんなに可愛らしい『スワン』の傘をつくっていることなど。
7年前、ここ恵文社で初めて「イイダ傘店」の作品を見たハヤセさん。これまで見たこともない傘にときめき、「ここで働きたい」とイイダ傘店の扉をノックしたそうです。ハヤセさんは「イイダ傘店」の歩みを知る、最初の1人目のスタッフなのです。
作家さんやアーティストだけでなく、私はそのまわりで働くスタッフの方々を尊敬します。表に名前が出ることはなくとも、工場の職人さんたちと同じように、たくさんの人の手が「ものづくり」を支えているのです。傘や布のことを教えてくれたハヤセさんの瞳は、「ものづくり」の人の目でした。
初めてハヤセさんにお会いしたとき、「おみやげです」といってもらった、『野菜スティック』のにんじんと、きゅうりと、だいこんの種。傘は買えなかったけれど、あのとき、なんだか、すごくうれしかった。ささやかなものも、一瞬の出逢いも、こうして、人の手から人の手へとつながってゆくのです。

2014.9. update.

Muji & Stripe

無地としましま

かわいらしい柄模様の傘が並ぶ傘展。女性のお客さんが多いの中、美しい傘を求めて男性の方もいらっしゃいます。旦那さんへのプレゼントとして傘を探しに来られる方も。『紳士日傘』という作品があるように、もともと日傘は男性が持つものだったとか。紳士に似合う、おしゃれでシックな傘も雨傘展に並びます。
おすすめなのが、オンもオフも普段使いしやすい無地やストライプの傘。色がキレイに出るように織り込まれた無地傘には1色のものと、傘の耳にアクセントカラーをいれたものがあり、無地に見える布にはさりげなく「イイダ傘店」のロゴが織り込まれています。ストライプの傘は2色の組み合わせを毎年変えているそうで、色が違うと傘の印象も大きく変わります。
無地やストライプは、傘をひろげたときのカーブの美しさが一層際立って見えます。傘を巻いたときのボタンやリング。手元。張りの感触。そして、一度でいいから聴いてみたい傘の中の雨音。シンプルな傘にも、イイダ傘店のデザインがつまっています。
男性が「イイダ傘店」の傘をさりげなく持っていたら、「おしゃれ〜!紳士!」と思ってしまうことでしょう。
「イイダ傘店」の傘展はギャラリーというより、もっとエンターテイメントなもの。傘を見て、傘にふれて、傘柄グッズを探して、傘からひろがる世界を体験できる空間。
毎回楽しみにしているノベルティグッズの「おみやげ」は、なんと『スワン』の金太郎飴でした!同じようでいて、一粒一粒微妙に違うスワンボートの金太郎飴。金太郎飴なんて、いったい何年ぶりだろう。きっと、子供のころ以来。恵文社を出て、京都・一乗寺の町を歩きながら、しばし子供のころに帰ります。口の中にはあま〜い金太郎飴。写真がないのは、たまらず食べちゃったから。ずっと雨が嫌いだったのに、「雨もいいものだ」と思うようになった今日この頃。口の中でホロホロととけていった金太郎飴の甘みが、なんとも忘れられません。

2014.9. update.

 PIE International

イイダ傘店のデザイン

人気傘店のオリジナルテキスタイルとオーダー傘を一挙公開

植物・動物・食べ物などをモチーフにしたオリジナルテキスタイルを使い、1本1本受注生産で作られる傘が人気のイイダ傘店。本書では、これまでのテキスタイル&傘コレクションを、工場取材や日々のスケッチなども交えつつ紹介。丁寧なものづくりの裏側がわかる1冊です。

著者:飯田純久
発売元:パイ インターナショナル
>> 本の購入はこちら

イイダ傘店

IIDA KASATEN

傘作家・飯田純久さんがつくるオリジナル傘ブランド。年2回、日傘と雨傘の展示受注会を開催。
http://www.iida-kasaten.jp/

ありがとう!

またまた来てしまった恵文社!素晴らしい本をつくってくれたイイダさん、お話を聞かせてくれたハヤセさん、タカヤマさん、本当にありがとう!このたび、『イイダ傘店のデザイン』の出版社 パイ インターナショナルさんにお願いして、本の紹介をさせていただきました。皆様、ありがとうございました。

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